罪滅ぼしの料理

独自の経営スタイルで注目を集め、「カラーミーショップ大賞2018」でも大賞を受賞した、「パンと日用品の店 わざわざ」の平田はる香さん。現在、トークイベントで全国をまわっているところですが、先々週に続き台風が九州を直撃し、トークイベントは中止になってしまいます。突如空いてしまった3日間。糸が切れたように動けなくなり、何もできなくなってしまいました。

本当だったら一昨日は熊本で、昨日は佐賀でトークイベントに参加していたはずだけど、2週連続の台風で予定が吹っ飛んで長野にいる。これで先週の宮崎に続き熊本と佐賀のトークイベントが飛んだわけで、こうなってくると自分が九州で台風と待ち合わせをして、イベントを飛ばしたのではないかと自責の念に駆られてくるから不思議である。

明日は長崎に行く。その後はリスケになった宮崎と、元々予定されていた鹿児島で2本トークイベントを行ない、いったん長野に戻って、福井に行く。自分がいつどこにいるのかわからなくなってきていて、世の中の社長という人種は多分もっと忙しいから秘書という仕事がいるのだなと妙に納得してきた。

空いてしまった3日間に何をして過ごそうかと考えていたのだけど、結局丸1.5日ベッドや床の上でゴロゴロと、用意した本を読むこともせず、目をつぶってみても眠ることさえできず、ただひたすらボッーとしていた。その間に夫が掃除をして、子ども達を散歩に連れて行く声が聞こえると鬱陶しく感じてしまう。二階に誰かが来ると目をつぶって寝たふりをして、誰にも声をかけてほしくないという雰囲気だけ作りながら過ごしていたのだった。

自分のいけない部分の一つなのだけれど、あまり中庸に過ごすことができない。過度に動いたり過度に思考したりそういうことは得意なのだが、時々糸が切れて動けなくなり、何もできなくなってしまうことがある。例えて言うならば、体全体に重石をつけられてベッドや床に深く沈み込んでしまい、自力ではとても起き上がれなくなってしまうかのように。一ヶ月に数回そういう日があって、そういう時はただただ寝っ転がってやり過ごすしかないということもわかっている。ただずっと寝ているわけにもいかず、仕方ないので昨晩は録り溜めていた新海誠の映画を長女と3本見ながらワインを飲んで、また床で寝てしまった。

さて、回復傾向の出てきた3日目の昨晩。買い物に行ってしこたま買い込んできた材料で料理をひたすらやる。料理は自分にとってはまるで罪滅ぼしのようなものだ。寝ていたお詫びの印として、過度に料理する。本当だったら毎日掃除して毎食ご飯を作るのが中庸でいいのだけど、私はどうしてもそうできない。過剰にやって、過剰にやらずという振り幅のでかいバランスの取り方しかできない。困るけど、仕方ない。これが私という人間なのだから。

さ、料理します。


カレーは15人分を2日分。量がとりあえず多すぎる。

明日から7日間、家を留守にする。今日作るのはその間に家族が食べる料理のサポートと、明日明後日の会社の賄いのカレー30人前。出張に行くと賄いも作れなくなってしまうので、せめて2日分のカレーを作って出かけることにした。自分の罪悪感を消すための罪滅ぼしに近いかもしれない。毎日賄いを作れなくてごめん、家を留守にしてすまん、こんな母親で悪かった。もう謝罪しか出てこない。笑。

最近、気がついたことだけど、誰かのために料理をすることはできるけれど、自分のためには殆ど料理ができない。家に一人でいると具なしのインスタントラーメンを1日1回食べるかどうかというくらいだ。食そのものに興味が全くなくなってしまう。誰かと一緒にいるから自分の健康が維持できているのだなとありがたく思う。

料理で気をつけることは二つ。素材を吟味すること、丁寧に下ごしらえすること。素材をきちんと適材適所に配置することだけ考えて、あんまりこねくり回さない。塩や油などの調味料もきちんとしたものを選び、最小限の手数で最大限味を引き出すことだけ考える。調理は難しいことはしないけど、ちゃんとやる。それだけ。

作ったもの。


鶏ハムは保存が効くので、出張するときに冷蔵庫に入れておくことが多い。


肉の芯温をきちっと測りながら。今回は68度に保温して鶏ハムを仕上げた。


先日の大阪出張の「こんぶ土居」で買った塩昆布で、セロリときゅうりの漬物を作る。


地元産のおいしい大根ではちみつ漬け。塩を振って、はちみつをかけて終わり。


カレーはクミンシードを効かせてキーマカレーにした。子どもの分もあるので辛さは控えめ。


料理を保存するのはステンレス容器が一番だ。匂いも色もつかない。


冷蔵庫に入れてもわからなくならないように、マステに内容物を書いて終わり。

こんな風に常備菜をいつも作っていてすごいと思われると困るので、言い訳をしておくと、いつもは余らないように一食分だけ作っている。1品か2品作るだけで食べきり。適材適所に配置する最小限料理だ。アツアツとか新鮮とかそういう不可抗力でおいしいと思うようなものしか作らないし、料理はいつもシンプルで、いい主婦でもいいお母さんでもないということは誤解のないように書いておこう。

これは自己弁護の料理であり、家族のためなのか、自分のために作ったのか全くもってよくわからない。結果として家族が喜んでいるので良かったという落とし所があることには、ある意味救われている。書いていて中二病感がすごくて嫌になるが、でも仕方ない。これもまた私なのだ。笑。コマッタコマッタ。


ということで、出張の合間の休みはポカンと時間が空きすぎて腑抜けになりました。明日までにはこの腑抜けから脱して、長崎でのトークイベントを全力でこなしてきます! 来週は九州を横断するので、旅のことを書きますね。また来週お会いしましょう!


<次回は10月17日(水)更新予定>


平田さんの文章をもっと読みたい方はこちら

この連載について

初回を読む
わざわざ平田の移住日記

平田はる香

長野県東御市にある「パンと日用品の店 わざわざ」。山の上の長閑なこの場所に、平田はる香さんは2009年にひとりでお店を開きました。平田さんがnoteで公開した記事「山の上のパン屋に人が集まるわけ」が大いに反響を呼び、独自の経営スタイル...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

yoshinon とても美味しそう!! ステンレスの容器は、匂いが付かないのか。そうかも。 4日前 replyretweetfavorite

wazawazapan cakes連載20回目〉ダメ人間故に料理する様を書きました。埋め合わせで生きています。 5日前 replyretweetfavorite