一億総ボケ社会を目指して

みんながボケになればいい—久保ミツロウ×マキタスポーツ対談【第2回】

日本社会に蔓延する「ツッコミ」について書かれた『一億総ツッコミ時代』(星海社新書)を上梓したお笑い芸人・マキタスポーツさんと、その本に感銘を受けたというマンガ家・久保ミツロウさんによるスペシャル対談。SNSの普及により、客観的な意見を簡単に手に入れられるようになった現代。だれしもが思わずギクッときてしまうお話が満載の第2回です!

人は表現に騙されたがっている

久保ミツロウ(以下、久保) 『一億総ツッコミ時代』(星海社新書)を読んでいて感じますが、マキタさんの物事に対する分析力は半端ないですね。どうしてそんなに分析して考えるようになったんですか?

一億総ツッコミ時代 (星海社新書)
一億総ツッコミ時代 (星海社新書)

マキタスポーツ(以下、マキタ) 好きだからとしか言いようがないんですよね。何を見ても構造が気になる。根本的には、“中身”に興味がないんでしょうね。子どもの頃から、音楽を聴いていても歌詞が全く入ってこなくて全部が音に聴こえたり、人と話していても、内容よりも声とか表情ばかり観察してしまうんです。

久保 ええっ、意外ですね。じゃあ、「作詞作曲モノマネ」とかは、どうやって考えているんですか? マネする相手の感情がわかっていないとできない気がするんですが……。

マキタ あれは、アーティストの楽曲の構造を分析することで、ネタをつくっています。コード進行の癖だとか、相手の仕事観などをひたすら分析して、そこから逆に感情を探っていくんです。

久保 それってつまり、物事を感情に流されずに見ることができるということですよね。うらやましいです。私は正反対で、フィーリングで「この歌詞いいな」とか「この文章かっこいいな」って感動しちゃうタイプなんで。

マキタ 僕には、そっちの方がうらやましいですよ。

久保 いや、でも構造がわからないから、単純なことに騙されてるんじゃないかって時々不安で。

マキタ 人って表現に騙されたいと思ってるんですよ。種も仕掛けもありませんって前提を疑いつつも「えええっ!!」って驚きたい欲望がある。だから、その欲望に素直な久保さんのようなタイプが、表現者としても正解なんだと思いますよ。僕のように構造自体を表現するのは、手品の種明かしみたいなもので、本当に人が求めているものとは違うんです。カウンターとしてはアリだけど、やっぱり人が本当に求めているのは、表現者の主観が押し出された表現。そして、それができるのは、自身が表現の官能に身を委ねられる人なんですよ。

久保 確かにそうかもしれない。漫画家って、自分にどれだけ陶酔できるかが勝負だったりする部分があります。それが、読者が漫画の展開に乗れるのか乗れないかにかかわってきますから。

マキタ やっぱり人は恋愛体質なので、もっと心を持ってかれたがってるし、乗っ取られたがってるんですよ。強い主観でバンって表現されたものには、その力がある。だからこそ、自分のご機嫌さを優先できる人って強い。

久保 漫画家はストーリーの最後の結末まで考えていないと「いきあたりばったりだ!」なんて言われるんですよ。でも週刊連載の作家さんは、理屈よりも自分の感情を優先してストーリーを変えていく人が多いんです。『ドカベン』の水島新司さんなんて、本当はホームランを打たせるつもりじゃなかったのに、絵を描いてみたら打ってる感じになったから、ホームランにしちゃったりすると聞きました(笑)。

マキタ それはかっこいい。

久保 私自身、漫画家にとって大事なことは、いかにキャラクターに引っ張られていけるかだと思っています。自分がいかにも考えそうな話って悪い場合もあるから。話を書く前に自分でも予想外のラストになった時は、良い漫画を描けたなと満足しますね。だから毎回毎回、どうやって自分の枠を越えていけるのか、わくわくしながら描いています。

マキタ やっぱり漫画家さんって凄いなあ。

「良い悪い」ではなく、「好き嫌い」を

久保 まあ、最終話の段階でストーリー中の伏線を全て回収できないと、駄作って言われてしまうんですけど。
 でも、有名な漫画家マンガのセリフで、最終話までが死ぬほど面白くて、最終話をクソつまらなく描くのも漫画家の醍醐味だって言ってました(笑)。最後のギリギリまでこのマンガはもっと面白くなるって努力のシワ寄せが最終回にくる場合もあるけど、それは裏切ることを目的で描いてる訳じゃないから!そういう風にしか描けない作家は全力でそこをさらけ出します。

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一億総ボケ社会を目指して

マキタスポーツ /久保ミツロウ /cakes編集部

『モテキ』(講談社)、『アゲイン!!』(講談社)などのヒット作を世に送り出したマンガ家としてだけでなく、テレビやラジオのレギュラ―なども持つ久保ミツロウさん。お笑い芸人に留まらず、ミュージシャンや役者としても活躍しているマキタスポーツ...もっと読む

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コメント

SilenceGandhi 人が本当に求めているのは、表現者の主観が押し出された表現。そして、それができるのは、自身が表現の官能に身を委ねられる人 https://t.co/J20zaqdOOW 2年以上前 replyretweetfavorite

hamadakenshicha 良い悪いより好き嫌い、 良い言葉だ 4年弱前 replyretweetfavorite

motoknzgn 表現者が守るべき「ご機嫌さ」――久保ミツロウ×マキタスポーツ対談【第1回】|cakes編集部| 5年弱前 replyretweetfavorite

larcfortdunord 「人は恋愛体質なので、もっと心を持ってかれたがってるし、乗っ取られたがってる」これやね 5年弱前 replyretweetfavorite