『孤独のグルメ』はなぜ面白いのか?
いらっしゃいませ。
bar bossaへようこそ。
先日、たまたまマンガ『孤独のグルメ』を読む機会があったんですね。すごく面白くて、どうしてこんなに面白いんだろうって何度も読み直してしまったんです。まず、圧倒的にお店の描写がうまいですよね。僕、飲食店を経営しているので、こういうマンガや映画なんかで「そんな言葉遣いをするバーテンダーいません!」とか「料理をそんな風には出しません!」ってことが、気になって気になってしょうがないんです。でも、この『孤独のグルメ』はその辺りの描写が完璧なんです。
それと気になったのが、主人公以外のお客さんを毎回丁寧に描いていて、主人公がその他の客の食べ方なんかを見て、「ああ、このお店ではこうやって食べるんだ」って学んでいるのもリアルで楽しい理由です。
でも、やっぱり僕が面白いと感じる一番の理由は、「主人公がお酒が飲めない」という設定なんです。主人公は「いかにも居酒屋という外観のお店」を前にすると、必ずちょっと躊躇するんですね。「ああ、こういうところではお酒を注文しなくてはいけないから、自分はお客として歓迎されているわけではないんだろうなあ」というような疎外感を持ってしまうんです。
それでタイトルをもう一度見ると『孤独のグルメ』とあります。「そうかあ、このマンガは酒中心にできている日本の飲食店の中で、酒が飲めない人という少数派が感じることを描いたマイノリティ文学だから、心に沁みて深く感動するんだ」ということに気がつきました。
前にもこのコラムで書いたように、日本の外食産業って、お酒の売り上げに頼っている割合がかなり高いんです。お酒をたくさん飲んでもらって、それで経営が回るように設定されているんです。例えば「飲み放題」ってありますよね。あれ、お酒をたくさん飲む人にとってお得なシステムのように感じられるのですが、実はお酒をあまり飲めない人たちからもちゃんと均一にお金を取れるように考えられたシステムなんです。
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