赤ちょうちん——懐寂しいおっさんにとってこれほど頼もしいサインはない。恵比寿、西麻布、六本木……いかなるシャレオツ繁華街に出向こうとも、まずは目指すのは赤い灯。煤けたカウンターに滑り込み、ビールや酎ハイで安いつまみを流し込み、きらびやかなピンクサインに思いを馳せる。
赤ちょうちん一つない代官山で詮なき仕事を終え、東急東横線で帰途に就いたとき、これが副都心線直通で埼玉のほうまで繫がっていることに気づいた。途中の池袋じゃあベタすぎる……思案を巡らせていると、夜遊びガイドのO氏からLINEが。「今練馬で飲んでいるんですが、来ませんか?」。
やっとのことでサムアップのスタンプを探し出して送信したとき、練馬に滑り込んだ。この間わずか25分、交通網の発達に驚愕する。
サラリーマン諸氏に押されるようにして、改札を出ると、目前には飲み屋街。赤ちょうちんや怪しげなネオンに引き寄せられるように諸先輩方が闇に消えていく。O氏に指定されたのは駅から徒歩1分という“赤ちょうちん”。煤けたビルと高架に囲まれたエアポケットのような場所にぽうっと灯る赤い光があった。
藍染めの暖簾に格子戸 おでん屋と思いきや
藍染めの暖簾がかかった格子戸を恐る恐る引こうとすると、なんと自動ドア。急に開けた視界。おでん屋台を彷彿させる店内で「いらっしゃいませぇ~」と元気に挨拶する女のコたち。見回せばそのコたちに、カウンターから腰を浮かさんばかりに口角泡を飛ばすO氏がいた。
左からゆきなちゃん(26歳)、のだめちゃん(18歳)、あかねちゃん(25歳)。ピーク時には12人ほどの女のコが相手をしてくれる
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