写真で話そう

青春」というテーマが与えられたら何を撮るか

カメラは被写体を写すだけでなく、撮影者が被写体をどう見ているかが記録されているという写真家・ワタナベアニさん。見る人が想像力を膨らませられる写真とはどういうものかを考えます。

ワタナベアニです。「レンズはカメラの裏側についている」といつも思っています。写真にはモデルが写っていますが、実は撮った人が「モデルをどう見ているか」が記録され、覗かれてしまいます。

俺はそれを「文学性」と表現するんですが、詩や小説のように、写真家が理想とする世界が上質であるほど、写真は魅力的になります。例えば草原にひとりの女性が立っている、など状況は何でもいいんですが、そこに物語を感じさせたい。それは写真を撮るためにポーズをしたのか、草原にいるのがリアルな日常なのか。

写真展をする時は、お客さんがどの写真の前に長く立ち止まっているかを観察します。長く見られる写真というのは、見る人に物語を想起させているのだと思います。それは状況を盛りだくさんに説明してみせることではなく、「モデルがなぜそこに立っているのか」を深く想像したくなるということでしょう。

クリシェという言葉をご存じですか。陳腐な表現技法のことを言います。たとえば「青春」というテーマで何か撮ってきなさいと言われたとします。あなたは何を撮るでしょうか。真夏のプールサイドに女子高生が裸足でいるところでしょうか。青春と言われてセーラー服の女子高生を思い浮かべることは、紛れもないクリシェです。

誰もが思う記号のようなモノに頼ると「ああ、そういうことね」と瞬時に判断され、写真をじっと見てはもらえません。10代の女性がセーラー服を着ていることは、属性を標識として扱っています。つまり文学性がなく野暮なのです。この写真を撮っている人は青春をセーラー服でしか表現できないんだな、と思われてしまいます。

フレームの中から説明をどんどん省いていくと本当に重要な部分が残ります。「普通のTシャツを着てるけど、この人は警察官っぽいな」と思わせるくらいの写真が撮れたらスゴいですね。俺にはまだまだ撮れませんけど。

ワイルドな男を表現するためにたばこを持たせたら、それはクリシェです。

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ワタナベアニ

写真家・ワタナベアニさん。年中無休、四六時中、カメラのシャッターを切り続けています。この連載ではそんなワタナベアニさんのライフワークともいえる、ポートレート写真を掲載していきます。レンズのむこう側で写真家は何を思っているのか、その様子...もっと読む

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コメント

sabochin 表現って難しいね 11ヶ月前 replyretweetfavorite