※小池龍之介「出家空間」より。現在はすでに閉鎖
ホームレスになった僧侶が「お城を守る」を語る
「自分のお城を守る」というテーマですのに、今回の原稿は、家屋に住むのを捨て、言わばホームレスになった者が、ベンチに座って書いています。
世捨て人となった出家修行者が「お城を守る」という世間的なテーマについてアドバイスするのも何となく説得力に欠けそうな気もするところですが、もう少しでこの連載が終了するまで、お付き合いいただきましょう。
さて、その世間、世俗とは、偽善に満ち満ちています。
今回は、「偽善者さん」という人物像を取りあげてみながら、実に巧妙に心へと侵略してくる偽善的な人々から、自らを守る方法をお伝えしてみようと思います。
やつらは、「すごーい」「さすがですね」を連呼する
というのも、これまで取りあげてきたようなあからさまに嫌な感じの人々や、攻撃的な人々というのは、侵略者としては、ある意味レベルが低いのです。なぜなら、彼らは見るからに面倒で嫌な感じなので、対策を立てて防御したり、それが難しければ距離を置いたり離れてしまえば良いだけなのですから。
ところが、「偽善者さん」の場合ときたら、なかなかそうはいきません。素敵な笑顔や、感じの良い言葉を連発しながら、グイグイと侵略してくるでしょうからね。
偽善者さんは、あなたに対して「すごーい」とか「さすがですね」とか「センスがいいですね」などと褒めるのが上手なはずなので、注意していないと、うっかり慢心をくすぐられてお城に入りこまれてしまうのですよ。
それの何が問題なのか、と思われますでしょうか?偽善者さんは、相手を褒めて気持ちよくさせれば自分が受け入れられ、言うことを聞いてもらえるメリットがあることを体得していますので、本心はさほど思っていなくても、とにかくよさそうなことばかり口にします。
甘い言葉を聞かされてその気になると、知らないうちにマインドコントロールされてしまう可能性があります。
偽善者モンスターの目的は、相手を操ること
その典型例を挙げてみましょう。子どもがちょっと利他的なことをしただけで―たとえばお菓子を人にわけてあげたいとか―過剰におだてるのです。
「わー、○○ちゃんは偉いね。優しい子だね!本当に、優しいねぇ」だなんて。
これは、偽善的マインドコントロールに他なりません。冷静に見れば、「そうだね、皆で一緒に分かちあうのは、良いことだね」と穏やかに言うくらいが、過不足なく、親と子が対等でいられるのです。
それに反して、「優しいねぇー!」とはやし立てるとき、暗に、褒めて「承認された」という快楽を与え、その快楽に中毒化して同じことを繰り返すようにと、子どもを支配しようとしているのです。
そのとき、お互いの関係は対等ではありませんね。ええ、子どもがどうすれば操れるかを中途半端に知っている親が、無意識的には子どもを下に見くびっているのです。
「褒められて喜ぶ」は悪癖になる
そんなふうにしてとても上手にお城を侵略された子どもは、侵略されたことにも気づかないままに、「こんなふうにすれば褒められるのか」と覚え、いつのまにかそうした行動を繰り返すようになるでしょう。
しかし問題が二つあります。
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