代表取締役としての分人〜わざわざ平田の出張日記

9年前に長野県東御市に移住して「パンと日用品の店 わざわざ」を開いた平田はる香さん。独自の経営スタイルや働き方で注目を集め、先日行なわれた全国のオンラインショップNo.1を決めるコンテスト「カラーミーショップ大賞2018」でも大賞を受賞しました。連載19回目は、「わざわざ」法人化で変わった意識について。平野啓一郎さんの本に出てくる分人主義の考え方が非常に役立ったといいます。


福岡県八女市「うなぎの寝床」でトーク後に振る舞われた賄い料理。全て私が作り、50人(お客様+スタッフ)と一緒に食べて飲んで話をした。

『わざわざの働きかた』という自費出版本を手売りして全国をまわるツアー中で、東京と福岡のトークイベントが終わった。本当はそのまま宮崎に行く予定だったけど、台風のために再来週に延期になったので、来週から再来週のスケジュールがさらに詰まりえらいことになってしまったが仕方ない。来週は東京→長野→熊本→佐賀→長崎→宮崎→鹿児島だ。もしかしたら死ぬかもしれない。笑。

「どうして今まではトークイベント等に一切出なかったのに、出ることにしたのですか?」という質問を受けて、「チャレンジなんです」と答えた。私は一人で店を始めてからこの10年間、実務にずっと携わってきたのだが、段々と社内の人材が育ち、店を切り盛りしてもらえるようになり、パンを焼いてもらえるようになり、一つずつ自分の手足を自由に動かせるような状況になってきている。

これまでは山の上でじっと待っていることしかできなかったけれど、手足が動く者として次にやらねばならないことがある。自分の足で歩き、人と会い、「わざわざ」を知らない人に「わざわざ」のことを伝えていかねばなるまいということだ。それをしなかったら事業は永遠に同じところで回すだけで、いずれ消えてなくなってしまう。外へ出ないといけないフェーズがきて、行かなければならないから、行くのだ。

私という人間は本来、非常に人見知りの性格である。人付き合いがひどく苦手で、休日はできるだけ一人で過ごしたいし、仕事以外で誰かと会うことは殆どない。cafeに友達と行ったことなどないし、誰かと行こうとも思わない。ただ、それが仕事となれば別であり、誰かと会うことは職務であり、必要であり、渇望もする。


私そのものだった「わざわざ」から新しい「わざわざ」へ


台風で帰りの飛行機が飛ぶか心配だったけど、周りの方の迅速な手配で無事に長野に帰ることができた。ありがとう。

「わざわざ」は会社になって2年目である。その前は個人事業主で8年間営業してきた。会社にして本当によかったと思っている理由が一つある。それは新しく「法人という人格」を自分とは別に持つことができたことである。

私という人間がやっていた個人事業主の頃の「わざわざ」と、株式会社になった「わざわざ」。見かけに違いは全くないが、自分と会社を切り離せたことで、心の平静を保つことができるようになった。個人と法人。自分自身であった「わざわざ」は法人になった瞬間に、自分自身ではなく「わざわざさん」という別人格になったのだ。

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わざわざ平田の思索日記

平田はる香

長野県東御市にある「パンと日用品の店 わざわざ」。山の上の長閑なこの場所に、平田はる香さんは2009年にひとりでお店を開きました。平田さんがnoteで公開した記事「山の上のパン屋に人が集まるわけ」が大いに反響を呼び、独自の経営スタイル...もっと読む

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コメント

dailyuse_me 「分人」という考え方 12日前 replyretweetfavorite

hiranok 「分人」という概念が、人生の中で具体的に役立っているというのは、とても嬉しいです。 https://t.co/I0uuXaJ8KG 2ヶ月前 replyretweetfavorite

ktnr181 僕も今年はじめて、『私とは何か』を読んだけど、分人主義という考え方はほんとに心を軽くしてくれる 2ヶ月前 replyretweetfavorite

mnm_egw 後でゆっくり読もう〜 2ヶ月前 replyretweetfavorite