読みたい人、書きたい人のミステリ超入門

第18回 人間が書けているとはどういうことか?(1)

「現実と同じ」ことと「現実感をもって受け止められる」ことは、似ているようでまったく異なるということだ。小説における「リアル」とは、必ずしも現実と地続きである必要はない――。
電子書籍文芸誌「yom yom」に掲載中の人気連載を出張公開。

 ミステリに限らず、小説を語る際によく「リアリティ」という言葉が使われる。「動機にリアリティがない」とか、「殺人の描写がリアルだ」とか、そういった具合に。
 では、「リアリティ」とは何だろう。どういうことを指して、「リアリティがある」と評するのだろうか。
 リアル、とは現実のことだから、現実世界を引き写した、寸分違わぬものを称して、「リアリティがある」というのだと思っている人は案外多い。随分前になるが、作中の登場人物に使われている漢字が人名用漢字にないことをもって、「この作品にはリアリティがない」から「こんなものは読まない」と言った「識者」がいて、アホかと思ったものだった。
 名前の漢字が人名用漢字に指定されているかどうかなど、どれだけの人が「現実」に意識しているだろうか。それでは、人名用漢字に指定されていない芸名やペンネームを使っている人は、「現実味がない」存在なのか? そういうことではないだろう。
 やや極端な例を引いてしまったが、誇張ではなく、こういう「現実と変わらないこと=リアル」だと考えるのが、一般的なのではないだろうか。ここで気をつけて欲しいのは、

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新潮社
2018-09-21

この連載について

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読みたい人、書きたい人のミステリ超入門

新潮社yom yom編集部 /新井久幸

ミステリ作家志望者、必読! 「新潮ミステリー倶楽部賞」「ホラーサスペンス大賞」「新潮ミステリー大賞」など、新潮社で数々の新人賞の選考に携わってきたベテラン編集長が考えるミステリの読み方・書き方の<お約束>とは――。電子書籍文芸誌「...もっと読む

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