北の桃岩、南のたましろ
これまで旅してきた離島は、40島以上。景色の美しさや、人の温かさに癒やされる一方で、「嘘でしょ?」と驚くような体験もたくさんしてきました。
そんな仰天体験を語る上で外せないのが、波照間島の名物宿「たましろ」に泊まったときのエピソードです。
有人島としては、最南端に位置する波照間島。南十字星を観測できる日本で数少ない場所であり、島内には、ニシ浜ビーチという有名なビーチもあります。「ハテルマブルー」と呼ばれる海は、息を呑むほど美しい青色。日がな一日、海をボーッと眺めて過ごすのもいいでしょう。
ニシ浜ビーチ。島の北側にありますが、波照間の方言では北のことを「ニシ」と言うそうです
私が泊まった民宿「たましろ」は、旅人のあいだでは名の知れた存在。北海道の礼文島に「桃岩荘ユースホステル」というゲストハウスがあり、「北の桃岩、南のたましろ」とあだ名されるほど、強烈な2大宿といわれています。
常連客から親しみを込めて「ゴミの巣窟」と呼ばれる宿
事前に噂を聞いていたため、「どんな宿なんだろう」とドキドキしながら到着して数分。まず驚かされたのが、相部屋に通されたことでした。電話で予約をしたときは特に何も言われず、部屋に通されてみたら相部屋だった……というのは、初めての体験。その時点では、同室の人が女性か男性かもわかりませんでした(後に女性と判明しました)。
波照間島の名物宿「たましろ」の外観
とはいえ、波照間島まで来て、クレームをつけても仕方ありません。気を取り直し、とりあえずサイクリングにでも行こうと、畳の上で荷ほどきを始めたんです。でも、なんとなく違和感があるんですよね。夏だったので、その日の私は、脚が半分ほど出るような服装をしていました。
嫌な予感がして立ち上がったところ、脚全体に、ゴミや塵が付着……。「お金を支払って泊まる場所で、こういう経験をすることは、なかなかないな」と思いながら、布団を広げ、その上で荷ほどきを続けました。この民宿、親しみを込めて「ゴミの巣窟」と呼ぶ人もいるほど。大きめのバスタオルを持ち込んで、その上で作業する人もいると知ったのは、しばらく後のことでした。
たましろに泊まった人のあいだで、必ず話題に上るのが、夕食・朝食のボリュームです。かなり大きなお膳の上に、さまざまなお皿が載ってきますが、基本的に炭水化物×炭水化物。私が泊まったときの夕食は、ご飯とうどん、メインのおかずが2種類という内容でした。朝食もかなりのボリュームで、噂によると、全部食べ切れた人はまだいないとか。
「たましろ」での夕食
空が白みかけた頃、嫌な予感がして目覚めると……
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