ワタナベアニです。連載を始めてわかりましたが、毎週5枚のポートレートを載せるって大変なことですね。平日は毎日ひとり撮っていなくてはならない計算です。以前撮ったモノも少し混ぜてはいますが、いつかそのストックは底を尽きるでしょう。
というわけで最近は今まで以上にムヤミに人を撮っていますが、ポートレートを撮るコツは最初の頼み方がとても大きいです。これが苦手な人って多いんですよね。
俺の場合はたまたま会って話した人に「撮りましょう」と誘います。言葉というのはスタンスの表明ですから「撮らせてください」「撮ってやるよ」のように、媚びたり、偉そうにしている態度は瞬時に相手に伝わってしまいます。
ですから俺はいろいろ考えた結果、「撮らせてください」というお願いではなく、相手と対等で共同の作業に感じる「撮りましょう」を使っています。
広告などの目的のある写真以外では、モデルはどんなポーズや表情をしようと自由ですが、素人ができるポーズなんて照れ隠しのピースがせいぜい。そこで写真に写ったときにどうなっていたらその人が素敵に見えるかは、こちらが考えます。これも迷っているとモデルが不安になったり飽きてしまうので数秒で決めます。
たとえばレストランや部屋で人と会うときは、その場の露出などを完全に把握しておきます。「アニさんは写真家なんですよ」という紹介をされ「私も撮ってほしい」と言われて立ち上がるときには、どこで何ミリで撮るかはもう決まっています。そこに立ってください。さあ撮りましょう、となります。
相手が何も考える暇なく撮影は終わっています。そこで初めて「露出とホワイトバランスと、レンズも変えて」なんてカメラをいじっていたら相手が何か演じようと考える時間を与えてしまいます。素人には時間を与えてはいけないのです。
「素人は女優のように、女優は素人のように」これが俺のモットーです。普通の人は主演女優のように撮りたいし、いつも女優として写る人は、それとは違うカジュアルさで撮りたい。そんなことを考えております。
先週のロケ先。食事中でも素敵な人を見つけたら撮る。
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