『エンタの神様』化する政治家珍答弁
自民党総裁選前に「NEWS23」に出演した安倍晋三首相が、星浩キャスターから、利害関係者である加計理事長とのゴルフや会食を控えるべきだったのではないかと問われると、「星さんは、ちょっと、ゴルフに偏見を持っておられると思います。あの、今、オリンピックの種目になっていますから、ゴルフはダメで、テニスはいいのか、将棋はいいのか、ということ、なんだろうと思いますよ」などと、話をとんでもない方向へ持っていった。キャスターの雨宮塔子が思わず破顔してしまっていたが、話が思わぬ方向にズレていく様子を見届けるのって、そこにいるのが政治家じゃなければ、基本的には面白い。この日の首相の様子を見て、「コントみたい」と反応しているのを見かけたが、それは、コントを作っている人たちに失礼である。
でも確かに、政治家の皆さんの堂々たる珍答弁を見ていると、これはもしかしたら、いつぞや見かけた『エンタの神様』でのコントに近いのではないかと思う時がある。「争点をずらすためにあやふやに答える」というのは、政治家とコントの共通項かもしれず、「あやふやに答えて追及から逃げる」政治家と、「あやふやに答えて場を混乱させる」コントは、途中まで同じ作りをしている。人と人とのコミュニケーションって、とりわけかしこまった場所では、決まりきった流れが用意されており、無難に進むと思いきや、そうはいかなかった時に笑いが生じる。
コントで葬式のシチュエーションが好まれるのは、ちょっとしたイレギュラーの発生がたちまち笑いにつながるからだろう。「ゴルフはダメで、テニスはいいのか」のように、政治家の答弁が道を脱線したままイレギュラーに突き進んでいく様子というのも、やっぱり笑いを生む。それこそ、アンジャッシュが得意としてきた、お互いが勘違いをしたまま会話がどんどん進んでいくコントのようなものである。
台本通りに進まないことを笑う
志村けんのコントを見ていると、志村けんにしろ、上島竜兵にしろ、台本通りに進まなかった瞬間に、笑うのをこらえている様子を意識的に見せ、その様子を指摘し合うことによって笑いを広げていく。いっつもそうだ。あの場では、あらゆるイレギュラーがレギュラー化している。見るほうは、「あっ、これ、いつものイレギュラーだ」と矛盾したことを思いつつ、ものすごく安心しながらそれを見ている。自分の好みで言えば、中川家のコントなどでも、うまくいかなかった時の動揺を笑いに変え、リカバリ作業でもう一回笑わせ、この迂回路はあらかじめ用意されていたのではないかと疑うほどだ。
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