男性社会で働きたいのに、男性恐怖を抱えています

今回、牧村さんのもとには、「男性の多い職場で男性恐怖を抱えている」という女性からのお悩みが届きました。男性が怖くて仕事がはかどらない相談者に、男性恐怖と向き合う方法、そして“男性社会で上手くやっていく”ことの定義について、牧村さんが優しく力強い言葉を送ります。


※牧村さんに聞いてみたいことやこの連載に対する感想がある方は、応募フォームを通じてお送りください! HN・匿名でもかまいません。

最初に申しあげます。この記事は、「女が男をやっつける方法」ではありません。男性社会で働く上での、男性恐怖と向き合う方法です。

今回はたまたま女性の方からいただいたご投稿ですが、ご紹介しましょう。きっと女性でなくても抱くのであろう、「漠然と男性が怖い」「なのに職場では男性と向き合わざるを得ない」気持ちについてのお話です。

牧村さん
いつも連載を心から楽しみに読んでおります。
この度、牧村さんのアドバイスを伺いたく応募しました。

こんにちは!

まあ、紙で書くお手紙みたいに丁寧な書き出しをなさるのね。ありがとうございます。さっそく拝読します。

私は、男性が苦手です。ちなみにレズビアンではありません。

まあ。それじゃ、どうして苦手か、お伺いしていい?

過去にとらわれてはいけませんが、父から虐待を受け、私を守らず私に頼ってくる母を支えながら育ちました。

大人になり、仕事やプライベートで男性と接する機会があるのですが、もう漠然と男性が怖いんです。

男性にとって私の存在は迷惑、頼ってはいけない、少しでも気にくわないことがあれば攻撃してくる、嫌ってくる、と感じてしまうのです。ひどい時は怖すぎて、思考が停止して仕事になりません。

それは、それは……。

男性からの虐待を受けながらも、男性を悪者にせず、「男性にとって私の存在は迷惑」とおっしゃる。その物言いに、あなたが編んできたあなたのサバイバル術を感じるようで、わたしもう、画面越しに文字で遠隔ハグを送りたくなります。ぎゅっ。

そうしてあなたは、仕事を続けていらっしゃる。

私は仕事が大好きなのですが、まだ男性の方が社会で活躍しており、なんだかんだ言って力のある男性に気に入られる女性は仕事で有利です。すっと男性の懐に入っていける女性、人懐こく男性に近づいていける女性…。

うう~。(←人を能力でなく忠犬度ではかる一部業界人や一部政治家の顔を思い浮かべている)

カウンセリングに何年も通い、外から見れば普通に生活できているようになりました。

しかし、やはり男性恐怖で仕事がはかどりません。悔しいです。
礼儀はきちんとするように心がけ、やるべきことはやるので、男性にものすごく嫌われるなどはありませんが、上手くやる人の距離感はなかなか掴めないです。

私の仕事の性質上、どうしても男性がいる組織で働いていく必要があります。また、そこで働きたいです。

牧村さんだったら、どうするでしょうか。

とりとめのない文章で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
(ご投稿の改行位置のみ少々調整し、全文掲載しました)


ご投稿、ありがとうございます。

拝読して思ったのは、ご投稿者の方が、礼儀正しく、男性を人間扱いしてきた方である、ということです。

「上手くやる」ことは、わたしにとって、ある種のあきらめです。しかしご投稿者の方は、あきらめずにいらっしゃる。「上手くやる」じゃなく「一生懸命やる」ことを、まだあきらめずにいらっしゃる。だからこそ悩むのだと思います。相談してくださってよかった。ぜひ一緒に考えて行きましょう。

男性社会において「上手くやる」とはどういうことか

男性……という記号で人をまとめて「上手くやる人」の中には、実は内心めちゃくちゃ男性を見下している人もよくいます。多分あなたも聞いたことがあるでしょう。

男は獣。
いつまでもガキ。
狼。
すけべ。
カブトムシ。

……こんな風に、男性それぞれを一個の人間として扱わず、雑にまとめた言い方を。

男性を、それぞれ個性ある人間として扱わず、「どうせエロガッパだから」「ヨイショしとけばいい」「男なんかこれで一発よ」っていう扱いをする。これ実際、処世術としてある程度機能しちゃうんですよね。で、こういう処世術に上手くやられちゃう彼らの方もまた悪気なく……もしくは、さみしさを悪意に変えて、こう思っていたりします。

女は飾り。
お花。
トロフィー。
スイーツ(笑)。
ま~ん。
カネさえあれば。

で、人間と人間ではなく、スイーツ(笑)♀とそれを食らう獣♂のコミュニケーションになる。その場で有効なセリフはだいたい下記のようなものです。

男と女が互いに人間扱いし合わない場合には機能する、女性の対異性処世術
1 わかんな~い
2 できな~い
3 やだ~うふふ♡
4 すご~い

この振る舞いで、乗り切る人もいます。また、このような振る舞いを女性に求める男性もいます。でもわたしは、わたしでいたい。「男」じゃなく、「その人」と話したい。

わたしに「わかんな~い」「できな~い」「やだ~うふふ」「すご~い」という生き抜き方を仕込んだのは、わたしより上の世代の女性たちでした。ならばわたしは、その次世代のわたしは、それをアップデートしたいのです。ある種のあきらめで生き抜いたあの女性たちの、仕事することも勉強することも意見することも許されなかったあの女性たちの、本当の願いを、わたしはまだ、あきらめずに継ぎたいのです。わたしも、女だから。わたしも、人類だから。

この、日本女性に伝わりし4つの呪文を、今から一つずつわたしなりにアップデートしていきたいと思います。

●1 「わかんな~い」じゃなく、わかること増やす。わからないこと聞く。

「女はバカなほうが可愛い」という説を振りまく人は男女問わずいます。著名人の作品でいうと、古くは芥川・直木賞創設者の菊池寛によるお説教本「戀愛と結婚の書」、現代では秋元康作詞のアイドルソング「アインシュタインよりディアナ・アグロン」なんかに見られた思想です。

でもわたしは、一生懸命わかろうとするわたしこそ、可愛いと感じる。例えば秋元康世代の男性とこういう感じの会話をしたりします。

「俺ぁよ、言やあ、暴走族上がりでよ」
「そうなんですね。具体的に何してたんですか?」
「えっそりゃ……単車で走って、よその奴らとぶつかったら喧嘩して」
「あ、小説で読んだことあります。武器は鉄パイプですか?竹刀ですか?」
「いや殴り合いだよ」
「何を巡って殴り合うんですか」
「道」
「道!? 公道の走行権を巡って殴り合うってことですか?公道ですよね!?」
「いや、まあ(笑)。だからそれでな、俺がやめようと思ったのはよ……」

めっちゃ面白かった。元ヤンのほか、タイで起業したい人、海釣りには行かず山釣りにこだわる人、マクロ経済の専門家、などの話を最近は聞きました。

「わかんな~い」をやめ、わかろうとする。わかることを増やし、わからないことは聞き、わかるフリも、わからないフリもしない。そういう向き合い方をすると会話が面白くなる、ってことに、性別は関係ないと、わたしは思っています。

(余談ですが、「俺ぁ暴走族上がりだ」みたいなやつに良いとも悪いとも言わず「そうなのね。それであなたはどうなすったの」的なことを返す、つまり価値判断で停止せずに深掘り質問で理解を深めようとする方法をわたしは徹子メソッドと呼んでいます。『徹子の部屋』で黒柳徹子さんが連発する技だからです)

●2 「できな~い」じゃなく、「やってみたい」。騎士団の護衛列を乗り越える

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ハッピーエンドに殺されない

牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

3839Ay  価値判断で停止せずに深掘り質問で理解を深めようとする、子ども時代の話、シャンプータイム 6ヶ月前 replyretweetfavorite

i_zawa 男性恐怖を抱えています https://t.co/aQjZqOIEtt "この記事は、「女が男をやっつける方法」ではありません。(略)今回はたまたま女性の方からいただいたご投稿ですが(略)女性でなくても抱くのであろう、「漠然と男性… https://t.co/1CtQgcopME 8ヶ月前 replyretweetfavorite

tomonaaoi292419 まきむぅさんのエッセイ読んでたら「遠隔ハグ」の文字が!!! 8ヶ月前 replyretweetfavorite

come_on_kuma 言葉にしてくれてありがとうって気持ち。男性も女性も、見てくれの皮じゃなく中の玉を見るようにしたい。人間同士。 8ヶ月前 replyretweetfavorite