僕のバアちゃんが『イモ洗いに行く』と言い張った話

強烈な個性をもつ「バアちゃん」を中心に、昆布山葵さんの家族の爆笑エピソードをお届けするこの連載。今回はバアちゃんが「イモ洗いに行く」と言い張ったお話です。

ある時、バアちゃんが『イモ洗いに行く』と言って出かけていった。

僕は『おー、いってらっしゃい』と軽く送り出したが、しばらくして違和感に気付いた。

よくよく考えてみたら、『イモ洗いに行く』って何だ。

家で洗えよ。

自宅に水道あるんだから、わざわざ外出しなくてもイモくらい洗えるはずだ。

というかドコで洗うつもりなのだろう。まさかご近所さんの水道を借りるというわけでもないだろうし、川にでも行ったのだろうか。

『おばあさんは、イモを洗うために川に行きました』ってか。桃太郎の一匹や二匹ひろってきそうで怖いな。

そもそも今ウチにイモなんてあっただろうか。

もっと言うとバアちゃんは手ぶらで出かけていったような気がする。

だとすれば、余計に『イモ洗いに行く』というバアちゃんの発言が俄然不可解になってきた。

…まぁ本当にイモを洗いに行っただけなら、10分もすれば帰ってくるだろう。

『イモ洗いに行く』というのは僕の聞き間違いだったのかもしれないし、帰ってきたら本当はどこに行っていたのか聞けばいい。

僕がそんなことを考えてから、果たしてバアちゃんは3時間以上も帰ってこなかった。

それから帰宅したバアちゃんにあらためて『どこ行ってたの?』と尋ねてみると、バアちゃんはあっけらかんと『イモ洗い』と答えた。

僕『…イモ洗い?』

バアちゃん『イモ洗い』

僕『手ぶらで行かなかった?』

バアちゃん『財布は持ってた』

僕『イモは?』

バアちゃん『持ってない

僕『じゃあ何しにいったの?』

バアちゃん『イモ洗い』

…どうにも要領を得ない。

バアちゃんは手ぶらでイモ洗いに行き、手ぶらで帰宅してきたというのだ。

イモを洗いに行ったなら、イモを持って帰ってくるのが道理というものではないのか。

だって、洗うだけ洗ってイモを置いてくる意味がわからない。アライグマだって自分で洗った食べ物くらい持って帰ってくるのに。

結局このとき、バアちゃんが本当はどこに行っていたのか聞き出すことは出来なかった。


後日。

バアちゃんがまたいそいそと準備をして『イモ洗いに行ってくる』と言い出した。

案の定イモなんて持っておらず、財布だけを持って出かけていく。

前回の『イモ洗い』の話を僕から聞いていた母も、心配そうに呼び止める。

母は『本当はどこ行ってるの!?』と聞くが、バアちゃんはコブラみたいにニヒルな笑みを浮かべて『イモ洗い!』と言い残して出かけていった。

このやろう。

たぶんバアちゃんは、僕たちが困惑しているのを楽しんでいた。

案外イタズラ好きな人なので、家族が意固地になって行き先を聞こうをするほど楽しそうに『イモ洗い!』としか教えてくれない。

その後も、バアちゃんは時々『イモ洗い』に出かけていった。

どうせ教えてくれないので家族も行き先を聞くのを諦めかけていたが、バアちゃんは持ちネタのように『イモ洗い!』と言って外出する。

このワードが大変お気に召したらしく、僕が『おはよう』と言ったら『イモ洗い』と返されたときはキレそうだった。

バアちゃんが『イモ洗い』と言い出して数か月ほど経った頃。

うちの母親がとうとうバアちゃんの『イモ洗い』の正体を突き止めることに成功した。

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僕とバアちゃんと家族の話

昆布山葵

noteで話題になった「僕のバアちゃんが物理的に除霊を行った話」の作者・昆布山葵さんによる書き下ろしエッセイ!強烈な個性をもつ「バアちゃん」を中心に、昆布山葵さんの家族の愉快なエピソードをお届けします。

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r28 おもろいバアちゃんw 約1年前 replyretweetfavorite