第6回】 飛行許可のおりない無人偵察機に大枚をはたいたドイツ国防省のスキャンダル

 今年になって明るみに出た無人偵察機の購入をめぐるスキャンダルが、まことに喧しい。国防大臣デ・メジエールの首が飛びそうな勢いだ。  ドイツでは9月に総選挙があるので、野党はここぞとばかりに大臣攻撃に励んでいるが、野党の雄SPDの攻勢がところどころ緩むのは、おそらくこのプロジェクトの言い出しっぺがSPD自身であるからだろう。気を付けないと、火の粉が飛んでくる恐れがある。

川口マーン惠美 連載第1回~第5回はこちらからご覧下さい


ドイツ仕様の「ユーロ・ホーク」(Euro Hawk) 〔PHOTO〕gettyimages

今年になって明るみに出た無人偵察機の購入をめぐるスキャンダルが、まことに喧しい。国防大臣デ・メジエールの首が飛びそうな勢いだ。

 ドイツでは9月に総選挙があるので、野党はここぞとばかりに大臣攻撃に励んでいるが、野党の雄SPDの攻勢がところどころ緩むのは、おそらくこのプロジェクトの言い出しっぺがSPD自身であるからだろう。気を付けないと、火の粉が飛んでくる恐れがある。

すべては公開の入札なしに進んだ

 順を追っていく。

 2001年、当時、国防大臣であったSPDのルドルフ・シャーピングが、無人偵察機の開発を提唱した。高度20キロを飛び、地上の無線やレーダー通信をキャッチする。

 機体はアメリカのノースロップ・グラマン(Northrop Grumman)社に、そして、諜報テクニックはEADS(European Aeronautic Defence and Space)社に発注という案だった。ノースロップ・グラマン社というのは、世界4番目の軍需メーカー。EADS社は、ヨーロッパの航空・宇宙テクニックのコンツェルンで、ボーイング社に次ぐ、世界第2の規模。航空機メーカー、エアバスの親会社でもある。

 2003年、シャーピングの後を継いだSPDのペーター・シュトゥルック大臣のとき、ノースロップ・グラマン社の無人偵察機、グローバル・ホーク(Global Hawk)が、試験飛行で初めてドイツへ飛んできた。このグローバル・ホークをさらに改良し、ドイツ仕様の「ユーロ・ホーク」(Euro Hawk)を作ろうという案が固まり始めた。国防省も、もちろん乗り気。

 2004年、国防省は前述の2社に、「ユーロ・ホーク」の開発、製造、納品の見積もりを依頼した。ただ、このときすでにEADS社は、同プロジェクトの問題点を国防省に対して指摘していたという。その内容については後述する。

 2005年11月、前述の2社が「ユーロ・ホーク有限会社」を設立し、12月に最初の見積もりが提出された。この時、政権はCDUとSPDの大連立に変わっている。国防大臣は、CDUのフランツ・ヨゼフ・ユング。すべては、公開の入札なしに進んだ。

 2007年、国防省とユーロ・ホーク有限会社は、無人偵察機「ユーロ・ホーク」プロジェクトを契約。発注は5機で、合計金額は12億ユーロ。

正規の飛行許可取得にはさらに6億ユーロが必要

 さて、今、大騒ぎになっているユーロ・ホーク問題というのは、飛行許可に関するものだ。ニュース週刊誌『シュピーゲル』によれば、すでに2009年夏、国防軍の一部の関係者は、ユーロ・ホークはヨーロッパでの飛行許可が取れない恐れがあると警告していたという。

 まず第一に、飛行許可の申請に必要な膨大な書類を、メーカーであるノースロップ・グラマン社が出し渋っていたこと。おそらく軍事上の機密が漏れるのを嫌っていたのだろう。そのうえユーロ・ホークには、ヨーロッパの規制に見合う衝突防止装置が装備されていなかった。このままでヨーロッパ上空の飛行許可が下りることは絶対に考えられない。つまり、すでにこの時点で、飛行許可という根本的な問題は認識されていたわけだ。

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シュトゥットガルト通信

川口マーン惠美

シュトゥットガルト在住の筆者が、ドイツ、EUから見た日本、世界をテーマにお送りします。

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