各方面から名著あるいは必読書と称賛されている『銃・病原菌・鉄 — 1万3000年にわたる人類史の謎』(ジャレド・ダイアモンド著・倉骨彰訳/草思社文庫)は、既にお読みだろうか。まだであっても、扱いやすい廉価な文庫版が上下巻ともに発売されたので、近く読もうと思っている人も少なくないだろう。原書は1997年に出版され、翌年、コロンビア大学ジャーナリズム大学院が新聞報道や文学作品に与える、米国で最も権威ある「ピューリッツァー賞」の一般ノンフィクション部門に輝いた。それだけでも読む価値が保証されたような書籍である。
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
文庫 銃・病原菌・鉄 (下) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
著者ジャレド・ダイアモンド自身からして興味深い背景を持っている。ユダヤ系として1937年ボストンに生まれた。父親は医師、母親は教師であり言語学者でもある。知的な環境に育ち、生理学で博士号を取得したがその分野に留まらず、鳥類学研究に取り組みニュージーランドで精力的にフィールドワークをこなした。この実体験が本書『銃・病原菌・鉄』に反映し、本書を生き生きとしたものにしている。その後、研究分野を人類と環境の総合歴史を扱う環境史(Environmental History)とし、「人間はこの地球上でどのように生きて来たのか?」という問いに取り組み、現在はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で地理学の教授に就いている。『銃・病原菌・鉄』はまさに環境史を一般向けに、かつもっとも概括的に扱った書物である。
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