山は出会いの宝庫?
あなたは最近、まったく知らない人に話しかけたことがあっただろうか?
あるいは、まったく知らない人から話しかけられたことは?
たとえば街を歩いていて、すれ違った他人に「こんにちは。今日はいい天気ですねぇ」などと話しかける人は、あまりいないと思う。そんなふうに話しかけられたら、身構えてしまう人も多いだろう。
そんな現代において、その場に居合わせただけの他人に話しかけても変に思われない場所がある。
そう、山だ。
山では、すれ違った登山者同士が「こんにちは」と挨拶を交わすのがマナー。挨拶から「いいお天気ですねぇ」「今日はどちらから?」などといった世間話に発展することもあるし、ときには山の話で盛り上がることもある。
中にはその出会いが一生モノになることだってある。詳しくはあとで書くけれど、私の知人は登山中に出会った人と結婚した。
山は出会いの宝庫なのだ。
山で出会った人と仲良くなりやすい理由
山では、初対面でも会話がはずむことが多い。
これには2つの理由があると思う。ひとつずつ解説していこう。
①登山でテンションが上がっているから
山に来るとテンションが上がる人は多い。
「登れた!」という達成感。雄大な大自然に包まれる爽快感。日常と切り離された開放感。
また、はじめて登る山では「無事に登れるかな……」という不安が少なからずあるため、無事に目的地に着くとほっとする。ほっとした反動でめちゃくちゃハッピーな気分になる人もいるだろう。
そういった要素によってテンションが上がり、いつもより饒舌になるのだ。
②山という共通の話題があるから
山にいる人のほとんどは登山が好きだ。中には好きじゃない人もいるかもしれないが、少なくとも、その日は同じ山を登っている。話題が見つからないということがない。
山によってはルートが複数あるが、同じ道を歩いてきた者同士だと
「最後の登り、キツイですよね~」
「私もあそこで心折れました~」
みたいな連帯感が生まれて話がはずむ。「その道が険しければ険しいほど話がはずむ」というのが私の持論だけど、データには基づいていない。
ちなみに、
「まぁ、私はあちこちの山登ってるし、この程度じゃ全然疲れないけどね」
みたいな謎のマウンティングをしてくる人に出くわすこともあるけど、そんなときはそっと会話をフェードアウトさせれば問題ない。
だけど、仲良くならなくたっていい!
私はプライベートで登山をするとき、他の登山者との交流を大切にしている。
人見知りなのであまり自分からは話しかけないが、「来る者拒まず」のスタンスだ。
今まで、たくさんの面白い出会いがあった。2話で書いたように知らないおじさんから娘の結婚相手について相談されたり、「さっき滑落したわ~!」と豪快に笑い飛ばすおばさんから飴をもらったりした(応急処置済みだったけど、包帯から血が滲んでいた)。
山で出会った人たちと仲良くなることも多い。5年前によその山小屋で同室だった10歳上のお姉さんたちとは、その後も一緒に山に登ったり、東京で飲んだりしている。
だけど、すべての人に「山での出会いを大切にしよう!」と言いたいわけではない。
コミュニケーションを求めていない人だっているだろう。「誰とも関わらない」というスタンスも、もちろんアリだ。
個人的に、山での過ごし方は自由だと思う。正解なんてないのだ。
マンガみたいな運命の出会い
先週、夫と山小屋で出会った話を書いたが、山で結婚相手と出会うのは山小屋スタッフに限った話ではない。
夫の友人・ひとみさん(仮名)は都内在住の会社員。数年前、たまたま遊びに来た北アルプスで結婚相手と出会った。
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