小学生の頃に食べた山形の味
父が転勤族だったので、幼少期は山形で育った。
子ども心に驚いたのが、山形の食文化。
芋がら、納豆汁、イナゴの佃煮、ひょう干し、だし、あけび肉詰め、芋煮・・・未知の食材に好奇心が刺激されるのは子どもの頃からだ。
小学校低学年の時に、遠足で里芋掘りをした。
その時、同級生は里芋と里芋の茎を持ち帰っていた。
茎をどうするのかと聞くと、食べるのだという。
まったくイメージがわかなかったが、せっかくなので私も持ち帰ることにした。
持ち帰った里芋は「芋煮」になったが、母は芋の茎をどうしたら良いのか分からなかったらしい。
そこで仲良くなったママ友に料理方法を聞いて、芋の茎を干して「芋がら」というものを作ってくれた。皮をむいたり乾燥させたりと手間がかかる料理だったようだ。
納豆汁に入った芋がら。
自分が作ってと言ったのだけれど、正直芋がらより、芋煮の方が美味しかった。
これは母には言えなかったけど。
芋がら以上に衝撃的だったのが、昆虫のイナゴを食べること。
秋になると、同級生の男子たちが小学校へ空のポットボトルを持ってくる。
ペットボトルを持って田んぼのイナゴを捕りに行くそうだ。
虫とりは好き。捕まえたら虫かごにいれて、ひとしきり愛でたら元の場所へ返す。キャッチアンドリリース。
私も小学校へペットボトルを持っていき、学校帰りに男子にまじってイナゴを捕まえにいった。
イナゴがたくさんいるものだから、夢中になって捕まえて、ペットボトルにどんどんいれた。
手慣れた男子たちはペットボトルにぎっしりとイナゴを詰めている。
そんなにイナゴを捕まえてどうするのか聞くと「食べる」という。
どうやって食べるのか見当もつかなかったが、食べてみたかったので持ち帰ることにした。
ペットボトルにぎゅうぎゅうに詰められたイナゴを見て、母は顔が青ざめていた。
翌日、イナゴは佃煮になった。
最初はおそるおそるイナゴの後ろ脚だけをとって食べた。
後ろ脚は口の中でチクチクして、喉に引っかかる感じがした。
※売っているイナゴは後ろ脚をとってあります。
そして覚悟を決めて「えいやっ」と胴体をまるごと口にほうりこむ。
イナゴの胴体を歯で噛み砕く。じゅわっと濃い佃煮の味。
歯触りはジャリジャリ、舌触りはザワザワ。
エビの佃煮のような感じもするが、海産物の旨みとは違う。遠くに草の風味がした。
イナゴという未知の食べ物に触れた時のワクワク感と、食べた時の衝撃は今も忘れられない。
私が野草食や昆虫食など未知の食にワクワクするのは、転勤族で色んな地方にいたこと、その土地の食べ物、その文化を楽しんできたからかもしれない。