illust:ひうらさとる
翌朝、竹島建設に行くと、人事部から四名が出向き、二十一階のいつもとは違う会議室に招き入れられる。さらに調達部からの二名が加わり、六対一の面談となった。
「まず、社長はどうしているのですか」
「昨日から連絡が取れません。申し訳ございませんが、今日は、どういう状況なのか逆に教えて頂きたいと思って伺いました」
ポケットの中で電話が震えた。社長かもしれないと思い、画面を覗き込む。
「社長……」
お客さんたちに断ってドアの外で電話に出た。
「淳也君、いきなり申し訳ない。今は会社に戻れない事情があって」
「社長、本当のことを教えて下さい。今、お客さんのところに状況説明に来ています。税金と社会保険料を滞納しているって本当ですか。顧客に差し押さえ通知が届いています」
「本当です」
「社長、会社は大丈夫ですか」
「滞納額が億を超えているので、正直、厳しい状況です」
「社長……。社長のおかげで僕は今、生きながらえています。社長、なんて言ったらいいのかわかりませんが、社長のおかげなんです。社長は僕の父親がわりみたいな存在なんです」
「……」
「社長、ちょうど客先にいるので、派遣社員をそのまま客先に受け入れてもらえるか交渉してみてもいいですか。会社が厳しいのだったら、派遣社員たちの受け入れ先を探してみます。社長は前に、いくら景気が悪くなっても自分はリストラなんてできないって話していました。受け入れ先があれば、人員削減をできますよね。とにかく僕にできる全部をやらせて下さい。ひと段落した後、また会ってくれますか」
「淳也君……。任せました。お願いします」
「社長、また会って下さい。いなくならないで下さい」