1話を作画するのに、10日かかります
——ここでいつもマンガを描かれているんですね。
浅野いにお(以下、浅野) はい。仕事場兼、自室ですね。1日の大半は、ここにいます。
——マンガを描くときは、まず何から始めるのでしょうか。
浅野 ストーリーづくりからですね。最初30分くらいで骨組みを考えちゃうんです。
——早いですね!
浅野 あんまり僕、ストーリーで悩まないんですよ。じっくり考えるのは、セリフの言い回しや、それに込められた意味合いなど。セリフは、テキストエディタに書きだしていきます。ここからここまでが、1話分の大体のあらすじとセリフです。
——文章にするのではなく、箇条書きで書いてあるんですね。
浅野 だいたい1時間くらいで、単行本1冊分のストーリーをざーっと書きます。それを、『おやすみプンプン』というマンガだったら、1冊に11話入るので、エピソードなどがバランスよく配分されるように11個に割る。そして、1話ごとに肉付けするように、セリフを一気に書いていくんです。
——ストーリーができた後はなんの作業に入るんですか?
浅 野 ネームです。セリフとコマ割りが書いてある、マンガにおける絵コンテみたいなものですね。僕、ここまでには、全体の作業の1~2割の時間しかかからないんです。
——ということは、作業の大半は……。
浅野 作画です。ほとんど絵を描いてます。いま、1話作画するのに、10日かかってるんです。
——それって週刊連載だと、間に合わないですよね。
浅野 まったく間に合いません。だから今は、休載して何話も描き溜めて、ガーッと掲載して、というのを繰り返しています。絵の作業はこれ以上急げないんですよね。効率化できない。アシスタントには写真からとり込んだ画像を元に背景を描いてもらっていますが、彼らの作業はそれだけなので。
——じゃあ、人物の部分は全部浅野さんが描かれているんですね。
浅野 そうです。背景をスキャンして合成するなど、デジタルの処理も全部やります。やることいっぱいあるんです。
——それは、マンガ家さんの中でも、作業量が多い方なのではないでしょうか。
浅野 そうかもしれませんねえ。以前は全部一人でやっていたので、そこからあまりやり方を変えたくないんです。なるべく全部自分で描いたほうが、マンガの出来不出来も自分の責任になりますしね。……ちょっとちょっと!
浅野 原稿の上に乗らないで(笑)。