かつての恩人との再会
脚本家としての可能性を買ってくれていたにもかかわらず、その期待に応えられないまま、疎遠になっていた恩人。
東映のプロデューサーの土田さん。
小説家デビューしたものの、本が売れないままでいた私に、救いの手を差し伸べてくれたのも、彼だったのでした。
担当の編集者さんと初めて食事をしたとき「吉川さんはどこかで物語作りを習ったんですか」と尋ねられ、「東映の土田さんというプロデューサーの方に一から十まで全部教えて頂きました」と答えたところ「土田さん! 知ってる!」となり……再会を果たしました。
私も30歳を過ぎていましたが、土田さんも30代、テレビ朝日系ドラマ『相棒』のプロデューサーとして、バリバリのやり手になっていました。そしてデビュー作『私の結婚に関する予言38』を読んでいただき「まだまだ粗削りだけど才能がある、『相棒』の脚本に挑戦してみないか」と声をかけてくださいました。
『相棒』は、脚本家が何人もいて、新人が入り込めるのは3本ぐらい。本打ち(脚本の打ち合わせ)なども、他のテレビドラマよりも厳しいと聞きました。
それでも私は腹をくくって、かつてのような戦いを始めました。
結論から言うと、百本近いプロットを書いたにもかかわらず、採用されることはありませんでした。悔しかった。本気で全力で打ち込んで結果が出なかったのは人生初のことで、この時の挫折感は半端なかったです。もう消えていなくなりたかった(笑)
しかし、ここで土田さんから学んだことが、後に小説家として、安定して物語を産み続けることができる原動力にもなりました。
プロデューサーから学んだ物語を作る極意
土田さんから教えていただいたことの一部を少し紹介しましょう。小説でも映像でも、物語を作ることを志す人すべての参考になるはずです。
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