皆様突然ですが「キノコ狩り」ってやったことありますか?
シティーボーイ・シティーガールが多いと思われるcakes読者諸兄ですから、きっと「一度も経験がないよ」という方が大多数なのではないでしょうか。
もったいない、あんなに楽しいのに……
キノコ狩りというとどうしても「危険」「素人には無理」というイメージが先走りがちですが、決してそんなことはないです。
PCが苦手な部長にWINDOWS10でパワポ資料を作成させ、それをメール添付で得意先に送信させる方がずっと危険度が高い、それくらいに思っていただいて問題ありません。うちの部長15MBのメール送りやがったよ……!
しかし、この話をすると必ず言われるのが、以下のようなセリフです。
「でも、キノコ狩りできるような山なんて近所にないよ?」
なるほど……確かに、素人が気軽に入ってキノコ狩りができるような山は、日本中探してもそう多くありません。
でも、そのようなセリフが出てくるのは「キノコ狩りは山奥でやるもの」という前提に縛られてしまっているから。
実は、この時期は奥山よりもむしろ、近所の公園やちょっとした雑木林にこそ、たくさんの良いキノコが出るのです。
街中であの高級キノコの仲間が採れるぞ
先日、ぼくは知人に依頼を受けてキノコ狩りのガイドをしました。
車を出してもらい、向かったのは高山の深い森……ではなく、大都市横浜の街中にある、とある公園。
憩いのさんぽみち
住宅のすぐ裏手の、こぢんまりとした緑道のようなところです。
こんなところにキノコがあるの? と半信半疑の友人を尻目に、石畳の道を歩いていくと、法面の少し上のところにいかにもキノコ然としたシルエットが見えます。
これは、さっそく大当たりかな……
はい、さっそくありました。
これはヤマドリタケモドキというキノコで、食べられる野生キノコの中でも屈指の美味を誇る種類です。
若い時はこんな感じ
ヤマドリタケというキノコがあり、それにとてもよく似た近縁種であるためこのような和名がつけられています。
そして、そのヤマドリタケはフランスでは「セップ」、イタリアでは「ポルチーニ」と呼ばれており……といえば、ピンとくる人も多いのではないでしょうか。そう、パスタやスープ、リゾットの材料として著名なあのポルチーニのごく近縁種が、実はこんな場所で簡単に採れるのです。
ヤマドリタケモドキはヤマドリタケと比べるとやや柔らかく、香りも弱いと言われていますが、旨味の強さではけして負けてはいません。
横浜や東京都西部、千葉県北部には、もともと標高の低い里山だったところを開発し、住宅地にしたような地区がたくさんあります。
そのような場所は「自然に囲まれた住環境」を売りにするため、かつての雑木林の一部を造成後も残していることが多いのです。
多くの人が「キノコはじめっとした場所を好む」という誤解をもっていますが、実は多くのキノコはむしろ、からっとして風通しの良い環境によく発生します。なぜならキノコは胞子を散布するための器官であり、その胞子は風によって拡散されるからです。
なので、深い森よりもむしろ、間伐や造成など人の手が適度に加わった雑木林の方が、たくさんのキノコが発生します。
そして、上記のようなニュータウンの中の林は、まさに発生適地そのもの。
そのような場所に住んでいるよという方、夏から秋ごろに、道端に突然、やたら存在感のある大きなキノコが発生しているのを見かけたことはありませんか?
そのなかにはポルチーニの近縁種が少なからずあります。もちろん食べられないものもたくさんありますが、食べて美味しいものも同じくらいたくさんあるのです。
探索を続けていると、今度は濃い紫色で似たようなシェイプのキノコが見つかりました。
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