私を変えた、運命の女性

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。男女問わず、3年周期で運命の人と出会う森さんが、初めて女性に恋心を抱いた時のお話です。その運命の女性とは、一体どこで出会ったのでしょうか?

3年ごとに運命の人と出会う。

などと豪語すると、いかにもモテそうだがそういうスイートな話ではない。運命の人は必ずしも男性とは限らないし、幸運をもたらす人物でもないのだ。中には(当人にその気がなくても)私に不運をもたらしたり、試練を与えたりする。しかし後々に、あれはあれでよかったな、と納得できる相手だ。

埼玉県某所でひとり暮らしをしていた時に出会った裏ビデオを制作していたおじさんには、3年間お世話になり(裏ビデオに出ていたわけではなく、事務の仕事を任されていた)、そのさらに3年後にSNSで占い師と知り合い、結果その人のもとで働いてみたり(占い師の修行ではなく、やはり事務の仕事やパワーストーンのアクセサリー制作を担当していた)。

誰しもが生きていればキーパーソンとなる人と出会うだろう。その周期が、私は約3年なのである。

名前も年齢も住所もわからない運命の女性

随分前の話だが、都内某所のハプニングバーで運命の女性に出会った。ハプニングバーとは、主に性的な談話や交流を求めて人が集まる場所で、単独男性、単独女性、男女のカップル等々といったいくつかのパターンで料金が変わる。女性は無料、もしくは安価なシステムとなっているが、性的関係を結ばずに雰囲気だけを楽しみ、お酒を傾ける人もめずらしくない。

私も、特に情熱的なハプニングを期待したわけではないのだが、出会いというのはこちらの都合など飛び越えてやってくる。彼女の名前はもちろん、年齢も住所も不明。ただ黒髪のロングヘアでやさしい面立ちをしていたのは確かな記憶だ。彼女と私は濃密な一夜を過ごしたのである。

LGBTという言葉が良くも悪くも世間に影響を及ぼしている昨今、性というカテゴリーは4種類にあらず「Asexual(アセクシュアル=同性にも異性にも性的欲望を持たない人))のA、「Intersex(インターセックス=身体的に男女の区別がつきにくい人)」のI、「Questioning(クエスチョニング=自分の性別や性的指向に確信が持てない人)」のQなど、他にも私が知らない括り(括りというのも失礼かもしれないが)があるだろう。生まれつき自身のセクシャリティを理解している人は稀で、ほとんどの人は生きていく中で確立したり、あるいは変更、変化していくのではないだろうか。

ほんの好奇心でくっついて行ったら……

私自身は一般的にはノーマルだと自負しているが、愛が根底にあるならどんな性嗜好でもいいのでは、という考えだ。私ってけっこうオープンマインドよね、ピースフルよね、と若き日の私は勝手に悦に入っていた。自惚れも甚だしくて、実にいけすかない。それが都内某所のハプニングバーに行く前の私である。運命の女性に出会って、似非オープンマインド、似非ピースフルが粉砕したのだ。

私は自ら進んでハプニングバーに赴いたのではない。当時、ちょっと知り合った方が経営していたので、その共通の知人やら友人と訪ねたのである。最初は、コスプレして鞭を振ったりと無邪気に楽しんでいた。やがて緊縛ショーが始まり、ひとまとまりになっていた客達が散り散りになった。亀甲縛りを体験する人、即席のカップルになっていちゃつく人、そしてプレイルーム(プレイ専門の別室)に消える人々。私はほんの好奇心でプレイルームにくっついて行った。

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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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