◆必ず、第三者の眼を入れる
自分の書きたいことを思う存分書けとは言ったものの、好き勝手に書くのとは違う。自分のためだけに書くならともかく、一人でも読者を想定するなら、きちんと読み手に伝わるように書かねばならない。
主義主張があって書いているならなおのこと。誰にも伝わらない主張は虚しいだけだ。そして、新人賞投稿者からよく聞く話の一つに、「(原稿を)誰にも読ませていない」というのがある。友達でも家族でも、自分以外の第三者に読んでもらうことは非常に大事だ。
辛辣なことを言われたり、当たり障りのないことしか言ってもらえなかったり、全然分かってもらえなかったりして、憤慨することもあるだろうが、それは裏を返せば、きちんと伝わるように書けなかった自分の力量不足でもある。
そこを真摯に受け止められなければ進歩はないし、一人の読者すら楽しませられないのであれば、不特定多数の読者に訴えかけることなどできはしない。
もちろん、譲れないところはあるだろうし、あって然るべきなので、意見を全部聞き入れればいいというものでもないが、読者代表の意見として、最低でも聞く耳だけは持たねばならない。
他人に読んでもらって初めて、「あ、そんなことも伝わっていなかったのか」とか、「全然違った意味で読まれてたんだな」ということが分かるのだ。
著者は作品世界の神であるから、書かれていないことも含めて全貌を把握している。すべて分かって当然だが、初見の読者はそうはいかない。誰かに読んでもらって修正する、というのを繰り返して作品はブラッシュアップされていくものだし、その過程で、段々と自分でも「これじゃあ、伝わらないだろうな」とか、「誤解を招きそうだから、丁寧に書いておくか」などの判断ができるようになってくる。
デビュー以降は、編集者がその第一読者の役割を担うわけだが、デビュー前は周辺の人に頼む他ない。
周りに本好きがいないから、というのなら、なおのことそういった人に読んでもらうのがいい。本好きは、いい意味でも悪い意味でも、一般読者の代表にはなれないものだ。
そして、これがまた難しいところなのだが、みんなに分かってもらえるように書こうとすると、どうしても
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