第11回】日本は、どうやったらブラジルに勝てるのか?

いよいよコンフェデレーションズカップ開幕!ということで、清水さんは先日ブラジルへ飛び立っていきました。6/16の早朝に行われる「日本×ブラジル戦」は、現地からのレポートをお送りしますので、お楽しみに!(記事は6/17[月]アップ予定です)そして、今回は6/11に行われたイラク戦を振り返り、ブラジル戦のプレビューをします。「試合の見所は?」「どうやったらブラジルからゴールを奪える?」サッカー王国との一戦を前に、ぜひご覧ください!

パスを選んだ遠藤の意図とは?
イラク戦を振り返る

11日に行われたブラジルワールドカップ最終予選、消化試合となったアウェーのイラク戦は、岡崎慎司のゴールで1-0の勝利を収めた。

得点シーンは試合終了間際、カウンターから岡崎がドリブルでボールを運び、右サイドを走る前田遼一にパスを出すようなフリから、切り返してさらにドリブル続行。充分に相手DFを引きつけ、左サイドを駆け抜けた遠藤保仁へパス。これを受けた遠藤は、再びグラウンダーのパスを折り返し、最後は中央から岡崎がゴールを挙げた。

僕がちょっと気になったのは、試合後の遠藤に対するテレビのインタビューだ。

アナウンサー:
「あの場面でパスを選択しましたが、狙いを聞かせてください」
遠藤:
「自分もフリーだったし、もちろん最初はシュートを狙っていたが、より確率が高い方を選んだ」
 
いくつかの質疑応答の後…
アナウンサー:
「話は戻ってしまいますが、あの場面は自分で決めるという選択肢はなかったのでしょうか?」
遠藤:
「(ほぼ同様の受け答え)」

パスを選んだことについて、ずいぶんしつこく聞くなあ…と感じたので、印象に残った。もしかすると、解説の松木安太郎さんがいつも「シュートを打て!」と発言しているので、それが刷り込まれているのかもしれない。アナウンサーの脳裏にも「遠藤はいつもゴール前でパスばかり選択しているから、今回もそうだったのではないか」という考えがあっても不思議はないだろう。

「本当はシュートを打つつもりだったのか?
 最初からパスを出すつもりだったのか?」

このような疑問は、その前のトラップやコントロールを見れば明らかになる。あの場面、遠藤は岡崎からのパスを右アウトで前方へ大きめにコントロールし、スピードを殺さずに縦に運んだ。

しかし、利き足の右足でシュートを打とうとすると、相手の寄せが速く、シュートブロックが間に合ってしまいそうなタイミングだ。強引に相手から遠いほうの左足でシュートを打つ選択肢もあるが、利き足ではない上に、右足に比べてゴールへのシュート角度が狭くなってしまう。これでゴールが決まるとしたら、コース、威力、共に完璧なシュートでなければならない。たとえば2006年ドイツワールドカップの3戦目、ブラジル戦で玉田圭司がニアサイドのゴール天井をぶち抜いたような、いわゆるスーパーゴールの類が求められる。

そこで遠藤はどうしたか? シュートを諦め、フリーで中央へ走り込む岡崎へのパスに切り替えた。スーパーゴールを捨てて、より確率の高いゴールをアシストしたことになる。

「トラップした瞬間は自分でシュートを打つ気満々だったが、その後、状況を見てパスに切り替えた」という遠藤の言葉は、この辺りのボールコントロールの流れからも裏付けられる。

イラク戦は
消化試合ではなかった

うまい選手と下手な選手の違いのひとつは、自分の状況判断を『捨てる』ことができるか否かだ。最初にひらめいた選択肢に固執せず、状況に合わせてプレーをやめ、他の選択肢に切り替える。シャビやイニエスタ、あるいは現役時代のジダンのプレーを思い返せばよくわかるだろう。インターセプトされそうなパスをとっさに止めてドリブルしたり、ブロックされそうなシュートをとっさにパスに切り替える。うまい選手は自分の状況判断を、いつでも自由に捨てることができる。

これは言葉にすると簡単だが、実際はなかなか難しい。「このパスは失敗しそうだな…」と薄々わかっていても、プレッシャーを受けて余裕を失うと、プレーを止められずにエイヤッと強引にやってしまう。思慮の浅い判断というか、粘りのない決断というか。そして実際に失敗する。

そういう意味では、ドリブル中に右サイドへのパスを『捨てた』岡崎、失敗しそうなシュートを『捨てた』遠藤のプレーは、よりゴールの可能性を高めるためのすばらしい状況判断だったと僕は思う。

もちろん、日本選手がシュートを避けてパスを選ぶ傾向が強いことに対し、松木さんやアナウンサーがやきもきする気持ち。それはよくわかる。たとえばコーナーキックから今野泰幸がヒールパスで遠藤にシュートを打たせた場面などは、「自分で打てよ! シュートが遠くなってるだけやん!」と言いたくなった。

しかし、僕はこう思う。本当に重要なのは、何でもかんでもシュートを打つことではない。もっと具体的に言えば、シュートを打てる位置に常にボールを置こうと意識したトラップをすること。すなわち『結果』どうこうではなく、『準備』をしているか否かが肝要。そこから先の判断として、実際にシュートを打つか打たないかは本人次第でいい。状況に合わなければ判断を捨てても構わない。

今回の遠藤も、最初にシュートを打ちに行くことで相手がブロックに入り、岡崎へのパスコースが生まれた。もしも最初からパスを狙うようなコントロールで足元にボールを止めていたら、パスコースも生まれず、あそこまでイラクを崩し切ることはなかっただろう。遠藤がカウンターでいち速く飛び出したことを含め、先手を打って相手に恐怖を与えたアグレッシブな姿勢により、その後の駆け引きで優位に立ったことを評価したい。

シュートを打て、ではなく、「シュートを打てる位置にボールを止めているか?」
縦パスを出せ、ではなく、「縦パスを出せるように視野を確保しているか?」
仕掛けろ、ではなく、「仕掛けられる位置にボールを置いているか?」

本当に重要なポイントは『準備』だ。準備さえしっかりできていれば、あとはピッチに立つ選手本人のとっさの皮膚感覚がすべて。その決断は尊重したい。
イラク戦を得るもののない消化試合と感じた人も多いかもしれないが、僕は遠藤や岡崎の姿に頼もしさを感じた。コンフェデレーションズカップでも、やってくれるのではないかと期待している。

日本は、どうやったらブラジルに勝てるのか?

さて。ここからはコンフェデの話へ。日本時間の16日早朝、開幕戦のブラジル代表vs日本代表の一戦がキックオフとなる。

ブラジルは強い。シャビ・アロンソを欠くスペイン代表の調子が上がらなければ、今大会ぶっちぎりの優勝候補と言えるだろう。
直前に行われた親善試合のイングランド戦とフランス戦から想定するブラジルの予想スタメンは、以下のとおりだ。

ブラジルは昨年10月に日本と親善試合を行い、4-0で勝利した後、翌月の11月には当時のマノ・メネゼス監督を解任。現在は2002年日韓ワールドカップでブラジル代表を率いて優勝を成し遂げたルイス・フェリペ・スコラーリが監督に就いている。

メネゼス時代からの変化と言えば、日本戦で大きなインパクトを残したラミレスが負傷明けの不安もあって代表から落選し、代わりにバイエルン・ミュンヘンのグスタボが入り、パウリーニョとダブルボランチを組むところだ。そしてカカが落選した前線にはフレッジを入れ、4-4-2を形成している。前線の4人はポジションを自由に変えることも多い。

このブラジルとの試合で勝敗を分けるポイントは……ずばり。解説を務める小野伸二に、「ボールの奪われ方が悪いですね」と言わせないことだ。

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居酒屋サッカー論 ~誰でもわかる深いサッカーの観方~

清水英斗

「ボールだけを見ていても、サッカーの本当の面白さはわからない!」日本代表戦や欧州サッカーなどを題材に居酒屋のサッカー談義を盛り上げる「サッカー観戦術」を解説します。「サッカー観戦力が高まる」の著者、清水英斗さんによる、テレビ中継の解説...もっと読む

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コメント

So_Kawai ●見てるなう: 4年以上前 replyretweetfavorite

takessi22 シュートを打て、ではなく、「シュートを打てる位置にボールを止めているか?」 縦パスを出せ、ではなく、「縦パスを出せるように視野を確保しているか?」 仕掛けろ、ではなく、「仕掛けられる位置にボールを置いているか?」 https://t.co/llvSe5hIN8 4年以上前 replyretweetfavorite

YamanakaNaoki 「美しく勝つことを要求するのがブラジル国民の伝統であり、また、それがブラジル唯一最大の『隙』ではないか」と。なるほど。久々に時差無しで観られる代表戦。ワクワクしてきた。清水英斗「 4年以上前 replyretweetfavorite

kaizokuhide 【06/14 14:53まで無料 】 4年以上前 replyretweetfavorite