中島岳志(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授)、枝野幸男(立憲民主党代表)
「もうひとつの船」立憲民主党結党の経緯
中島 立憲民主党の設立は、日本の政治史上において大きな出来事であると思っています。この5年ほど続く安倍内閣に対して、草の根レベルでは様々な不満や批判が出てきました。みんなこのままでは日本はもたないとわかっている。しかし、他に選択肢がないから、安倍内閣のほうがマシだと沈みゆく船に皆がしがみついている。それがおおよその国民の現実だったと思うのです。
そんな中、リベラルでセーフティーネット強化の考え方を持った立憲民主党が結党され、民進党時代には見えづらかったオルタナティブな方向性を打ち出した。まさに「もうひとつの船」が出てきた。やっと選択肢ができたという感覚だと思います。
枝野 半分は結果論だと思っています。今回の衆院選は様々な経緯があり、自民党との違いが自然に明確になりました。それが結果的に一定の支持につながったと思っています。
中島 まずは結党までの経緯を振り返りたいと思います。2017年の衆議院選挙を前にして、民進党の前原(誠司)代表が、希望の党に合流することを発表します。小池百合子都知事が中心になって立ち上げた希望の党への合流は、安倍一強政治を終わらせるための「現実主義」だと言い、そのために「現実的ではない」民主党内のリベラル派を排除する動きになりました。枝野さんたちを「非現実的な左派」というレッテルを貼ろうとする印象操作のような展開でしたね。
枝野 国粋主義的な保守二大政党を作ろうと思った場合、我々の勢力を「ゴリゴリの左派」とレッテル貼りする必要があったのでしょう。それでも成り立たないとは思いますが……。希望の党は、私たちに常にそのレッテルを貼り続けなければならない宿命にあったのかもしれません。そうしないと自分たちがわざわざ新党を作った意義を強調できないわけですから。
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