前回に引き続き、仕事をどうやって地方で作っていくかという話の続きです。今日はパンと日用品の店「わざわざ」が具体的にどのように移住者の雇用を増やしていったのかを書いてみたいと思います。
移住者を増やしたい
こんな素晴らしい景色の中で働くことができる環境に感謝している。
どこの地方も全く同じ課題を持っていて、今後は過疎化や自治体の縮小と戦っていくことになるのだと思う。人口が減っていくことは明らかであるし、それを食い止めるような政策を仕掛けるのも至極当然に思う。
私は地方に移住してきて事業を始めたものとして、一時期、人口が減るということに対してとてもナーバスになったことがある。きっかけは、小売について考えていた時で、人口が減っていく地域=日本でどうやって売上を伸ばしていくのか?という現実問題に突き当たった時だった。経済成長全盛期ならばつゆ知らず、資本主義の構造上、売上を伸ばさないと生存できない企業にとって、市場が狭まっていくことは恐怖でしかない。
かと言って、わたしは世界で商売をしようと思ったことが殆どない。最終的に自分がお世話になった地域に利益を落としたいという気持ちがあるし、世界に市場を求めて出ていくことが如何にも資本主義的で好きではない。商売をしながら矛盾しているが、利益優先の仕事のやり方はよくないと思っている。
仕事とは生きることだと考えているし、誰かのために必要であるならば勝手に伸びる。そうでないのならば必要のない仕事であるということで、そんなものは端からやる必要さえなかったもの。世の中はそういう合理性で動いているのだから、仕方ないのだ。利益や拡大は正直言うと全く興味がないし、そういったものは、後から落し物のように付いてくるものだと思っている。
そして、その考えに拍車をかけたのが、東御市の人口ビジョンの有識者会議のメンバーに選ばれて会議に参加したことだった。市が算出したデータを元にどのように人口を維持していくかを考える数回の会議であったが、良策は特に出ないまま終わったように思う。会議の最年少参加者が私であり、人口が減るという現実に立ち向かうはずの若い人が全く選出されていないことへの疑問を持った。
私としては若者(若くはないが)として、尖った意見をできるだけ話そうとした記憶がある。いずれにせよ、人口が減るという現実のデータを目にして、移住者を増やすことがまず必要であるという認識に、確信を持った日でもあった。
わざわざとしてできることはないのか?
店で働く人、倉庫で働く人、少しずつ職種も増やすことをできた。
事業を行ないながら「移住者を増やしたい」という思いが段々と強くなっていった。外から働く人を呼ぶために、最初に考えたことが待遇を引き上げることだった。はっきり言って、理念とか仕事の内容は二の次だ。
まずはシンプルに給料を高くすればいいと考えた。都会から引っ越して来る時に一番引っかかるのが給料問題だと思う。年収200万のパン屋で誰が働きたいだろうか? 最低ラインは300万。それができたら400万から500万に引き上げる。今もこの目標に向かっていて、現在、正社員の給料は400万円近くにまで上がってきている。
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