日本的な、あまりに日本的な。〜AbemaTV『極楽とんぼKAKERUTV』飲酒回に寄せて

6月21日に放送されたAbemaTV『極楽とんぼKAKERUTV』が炎上しています。番組に出演した女性が、番組内で加藤浩次氏などから罵倒されたと告発したためです。牧村さんは、加藤浩次氏がこの番組で酒を飲み怒鳴るまでの29年間の経緯をまとめたうえで、怒りや悲しみの先にある牧村さんの想いについて、強い覚悟を持って綴ります。


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芸人が酒に酔ってシラフのゲストを罵倒した番組が色々と話題だ。

番組名は『極楽とんぼKAKERUTV』。お笑いコンビ・極楽とんぼの山本圭壱氏が、2006年に出張先のビジネスホテルで当時17歳の女性に酒を飲ませ性的暴行をはたらき、事務所から契約解除されて以降、初めて相方・加藤浩次氏の隣に戻り、『極楽とんぼ』名義で送るレギュラー冠番組である。ちなみに2006年当時の報道で彼は「山本メンバー」と呼ばれていた。既視感がすごい。人類、進歩したい。

人類進歩したい2018年、このたび問題となった企画は『“狂犬”加藤酔ってます』。加藤浩次氏はじめ男性出演者3名が酒を飲み、「女性評論家」……という枠ってことにされて呼ばれたシラフの女性ゲストを怒鳴り倒したシーンだ。

たぶんそれを、“狂犬”という芸風だって受け止めてもらえると期待しながら。

加藤氏に“狂犬”キャラを期待する、無数の視聴者の目に取り囲まれながら。

ああ、これは。

体制への憧れを捨てきれないままに、反体制ポジションで噛み付く狂犬をやってたら、いつの間にか自分が体制側だった〜!!

って話ですよね。そう、わたしは思った。

こういう話は画面の向こうだけではなく、日本社会のあらゆるところで見られると思う。加藤氏は狂犬というか、狂犬代行業、って仕事をしたのだ。無数の「気に食わねえヤツをスカッと成敗してほしい」という鬱憤を背負わされて。「最近は好き放題できなくてつまんねえな。あの頃はよかった」的な。番組告知文にはこう書かれている。「20代の頃の熱く尖っていた加藤に戻るため、酔っ払った状態で、若者たちの討論を傍観&時折り参加!

!!!!!!!!!

お父ちゃんやめて!!!!帰ろ!!!!!(←何かを思い出しながら)

……ああ、あるあるすぎやしないか。ちょっと経緯をまとめるので見て欲しい。多分、いまこれを読んでくださっているあなたも、「あ、こういう話、知ってるわ」って、だれかの顔が浮かぶだろう。

これは、こんな話だ。
日本的な、あまりに日本的な。

加藤浩次氏が『極楽とんぼKAKERUTV』で酒を飲み怒鳴るまでの29年間

●1989年、加藤浩次氏と山本圭壱氏、それぞれ上京。劇団の研究生として出会う。貧困生活の末、オーディションに合格。吉本芸人となる。

●90年代、テレビプロデューサー片岡飛鳥氏(二人より年上)に見出され、お笑いコンビ・極楽とんぼとして深夜番組に出演。ちなみに番組名は『新しい波』。

●極楽とんぼ、片岡Pの手掛ける番組『とぶくすり』『めちゃ×2イケてるッ!』でキャリアを重ね、ケンカ芸・狂犬キャラを自認していく。

●2002年、山本氏が学園祭で下半身を露出。公然わいせつ罪で書類送検。

●2004年、DVD発売。タイトルは『極楽とんぼのテレビ不適合者』。

●2006年4月、加藤氏『スッキリ!!』出演オファーを受ける。一度は「やだ、無理、世の中のことわからない」などと渋るも、片岡Pに背中を押され、出演を決意。「ダメだったらめちゃイケでイジれる」と、帰る場所を用意されて出発。

●2006年7月、つまり『スッキリ!!』の3ヶ月後、山本氏が不祥事を起こし解雇。以降、加藤氏は“狂犬”キャラを封印。「山本を復帰させるためには僕が生き残らなければいけないんだ」と、以後10年間、真面目にコメンテーターする。

●2012年、『めちゃイケ』、出演者に飲酒させる企画で抗議を受ける(https://www.j-cast.com/2012/06/19136227.html?p=all)。

●事件からぴったり10年経った2016年7月、「あれから10年」をまんまと演出に使い、山本氏、『めちゃイケ』で地上波復帰。「極楽とんぼ 魂のケンカ! 田村淳ら軍団までもかけつけ号泣!」という話として構成される。

●「あれから10年」の2016年、加藤氏も『スッキリ!!』の偉い人と東洋経済で対談。

●同2016年、「自分が地上波以外で仕事をするとは思っていなかった」とショックを受けながらもAbemaTVに配属されたプロデューサー、極楽とんぼ業界復帰番組を手掛けることに。加藤氏、涙ぐむ。山本氏、ドサ回り(https://ent.smt.docomo.ne.jp/article/326853)。プロデューサー、地上波とネット番組の違いを聞かれ「地上波と比べ番組予算は追いついてきたと思います」から話を始める(https://www.wantedly.com/companies/abema/post_articles/123881)。

(以上、13記事まとめ。URLは本記事末尾に)


つまりこういうことだ。

『新しい波』『テレビ不適合者』みたいなポジションから噛みつき芸で成り上がってきた狂犬が、偉い人になつき、いつしか従順に吠え始めた。相方が帰る場所を守るために。しかしもう地上波は無理だった。地上波を見上げながらネットで吠えるみたいな視点になってしまった。そして、2012年に地上波でやって抗議された飲酒企画を、「地上波でできない企画!」っつってやってしまった。「ネットが地上波に劣るなんてのは単なる僻みである。地上波と同じく、ネットだって画面の向こうには視聴者がいるんだから、同じ」ってことに気づけないまま。あの頃の仲間ともう一度って想いで、あの頃のノリで、2018年に……

新しくなかった。

何ひとつ、新しくなかった。
「ネット番組」を作るつもりがなく、ただただ、テレビなのだった。

ここでわたしは手を止めている。この記事を続ける言葉が見つからない。

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牧村朝子

性のことは、人生のこと。フランスでの国際同性結婚や、アメリカでのLGBTsコミュニティ取材などを経て、愛と性のことについて書き続ける文筆家の牧村朝子さんが、cakes読者のみなさんからの投稿に答えます。2014年から、200件を超える...もっと読む

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コメント

3_libra_a 未来を創るために戦うって、多分こういうこと。 > 約1年前 replyretweetfavorite

c___v :(∩´。ω゜`∩): 約1年前 replyretweetfavorite

rokunai >新しくなかった。 >何ひとつ、新しくなかった。 >「… https://t.co/rnwno4H59t 約1年前 replyretweetfavorite

OMXvBzwpjtwcD1R 1件のコメント https://t.co/J9Fch5YbW4 約1年前 replyretweetfavorite