ワタナベアニです。ポートレートは「肖像画」のことですけど、写真でも同じです。洋の東西を問わず、肖像画を残す人々は庶民ではなかったので、モデルとなる人物の威厳や伝統を誇示する目的を伴って生まれたことが容易に推測できます。
そこから現代の「ポートレート」に変化していきますが、その方向は社会によっても大きく違います。試しにgoogleの画像検索に「女性 ポートレート」「female portrait」と打ち込んで、その結果を見比べてみてください。
日本の女性ポートレートは背景に爽やかな緑がボケボケにボケていて、多くのモデルは若く、笑っています。服装もフェミニンさを強調していて、カラー写真が多いことがわかります。
英語で検索した方の写真の多くは、年齢をあまり気にしない、意志の強い顔でレンズを睨んでいます。背景はほぼシンプルな黒バックや白バックで何も写っていません。モノクロ写真が多く、カラー写真でも服はモノトーンが多いですね。
このふたつは写真表現の差というより「女性をどう撮るか」「女性をどんな存在として見ているのか」の考え方、もっと言ってしまえば社会のあり方の違いまでもが写っていると言えましょう。レンズに微笑む女性のあり方をよしとするのか、レンズを睨む意志の強さを好むのか。
「ポートレートは自分を写している」と言われたりします。写るのはモデルではなく、撮っている人の理想像だからです。
帯の絵柄が素敵です。
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