「略奪者さん」の飢えは尽きない
やっかいな人のタイプ、4つめには「略奪者さん」を扱ってみましょう。
これは、文字通り取る人、奪う人ですね。自分が人に何かをしてあげたり助けてあげたりはせずに、してもらうこと、好意や愛情をもらうことばかりを望んでいるような種類の人です。
そういった思考が癖になりすぎていますと、「してもらえて当たり前」のような思いこみが染みついているため、自分の思うとおりの待遇が受けられなかったり、思うように好意を与えてもらえなかったりしますと、腹を立てる傾向にあります。
このような「略奪者さん」の特徴としては、「欲しい、欲しい」と望まんばかりで人に対して純粋な愛情を与える心が欠けているのですが、なぜ愛情を与えたり労力を無償で与えたりできないかと申しますと、心が飢えているからです。
根本的には、「見捨てられるのではないか」「他の人はどうせ裏切るのではないか」といったような不信感が無意識レベルにあるため、素直に他者に対して心を開くことができないでいるのです。
けれども、そうした弱さは裏に隠してしまいがちですから、表面的には、他者に対して飽くことなく「こうしてくれ」「ああしてくれ」と要求を突きつけ続ける、やっかいな人として振る舞うことになるでしょう。素朴な言い方をしますと、わがままな人、ですね。
ただし、単にわがままなだけではありません。見捨てられるのではないか、という恐怖と自信のなさが背景に隠れているため、他者がせっかくしてくれていることに対して、「ちゃんと本当に思いやりや誠実さがこもっているのかどうか」を、細かくチェックしていたりします。
「もっと私を知ってほしい」が根っこにある
精神レベルでは「これは気持ちがこもっていない」と不愉快になったりもします。外形的レベルでは、人がせっかくしてくれたことに対して、感謝するよりも、粗探しをして不満を述べたりもします。
たとえば、パートナーに掃除をしてもらったとして「有難う」とハッピーになるかわりに、「どうしてあそこにゴミが落ちたままなの?」と先に文句を言うような感じです。
もしくは、プレゼントをしてもらっても、喜ぶかわりに「本当はこういう三角のものより六角形のもののほうが好きなんだよね」と思ったり、(言わないほうがいいのに)言ったりしてしまう感じですね。
要するに、自分の希望に叶わないものすべてに対して文句を言う具合の心になっているのです。それは人の好意を評価する基準が細かくて神経質だということなのですが、いったい何のために、細かくて神経質なのでしょう。
それは、そうやってうるさく注文をつけることによって、他人に、自分の好みや、何が嫌いなのかをちゃんと分かってもらい、これからはその通りにしてもらいたいと望んでいるからです。
ところが実際は、要求が細かすぎるうえに、人の時間や労力を当然のように自分だけのためにたっぷり割いてもらおうと望むために、やがて相手は、疲れてきて逃げ出したくなる傾向があります。
職場の上司ないし同僚で、自分は手伝わずに手伝ってもらおうとばかりするうえに、手伝いかたに対して「手伝ってくれるのは嬉しいんですけど、そこの書類はもっときちんと揃えておいてほしいんですよね」とか、毎回、チクリと余計な一言を言ってしまう人がいたとします。
ふつうは、だんだん、その人は嫌われるでしょうし、喜んでは手伝ってもらえないことになるでしょう。本人としては、「もっと自分の好みと基準を知ってもらって、もっと大切にしてほしい」と思ってやっているのに、かわいそうに……逆効果なんですねぇ。
時間も精神エネルギーも当たり前に欲しがる
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