マシン」から「魔神」へ ~デビルマンとマジンガーZ ④~

2010年代に入ってから、ウルトラシリーズ、仮面ライダー、ヤマト、ガンダム、あるいは「ベルばら」「ポーの一族」などが次々と40、50周年を迎えている。それらはみな、単に昔のものとしてあるだけでなく、現役のコンテンツとして新作が発表され、映像化、舞台化されている。逆算すれば分かるが、これらの大半は1970年代に始まった。 1960年に生まれ、アニメ、特撮ものを最初期からテレビで見ていた中川右介(作家、編集者)が「リアルタイムの記憶を基にして目撃譚」として描くサブカル勃興史。

「記憶をたどりながら書きますが、公にするからには、記憶にだけ頼り、間違ったことを書いてはいかないので、改めて調べ、事実確認をして書きます。歴史家的視点と、当時の少年視聴者・読者としての記憶とを融合させ、「読者・視聴者としてサブカル勃興期を体験した者が書く歴史」を提示したいと思います。(筆者)

●グレート・マジンガーへの交代

一九七四年春で『ドロロンえん魔くん』『キューティーハニー』の二作は週刊誌でのマンガ、テレビアニメとも終了となり、永井豪の連載は「少年マガジン」の『バイオレンスジャック』と、「テレビマガジン」の『マジンガーZ』のみとなった。

 テレビでは『ドロロンえん魔くん』と入れ替わって『ゲッターロボ』が始まり、『マジンガーZ』と同時進行していく。

 その『マジンガーZ』を九月で打ち切り、一〇月から新番組にしたいと、東映動画が通告してきたのは、おそらく、七四年四月頃である。超合金マジンガーZの売上が鈍ってきたので、新商品を投入したいから、キャラクターを一新したいという。同じ理由で『ゲッターロボ』を始めたのに、さらに売りたいようだ。超合金ゲッターロボを四月から半年かけて売り、九月に新番組開始と同時に新型のロボットの超合金を発売するつもりなのだ。

 こうして『マジンガーZ』は九月までと決まり、新たに『グレートマジンガー』が誕生する。この頃になると、僕はリアルタイムではもう見ていない。

 グレートマジンガーは、テレビや雑誌よりも先に、七月二五日封切りの東映まんがまつりの『マジンガーZ対暗黒大将軍』でお披露目となった。新たな敵として暗黒大将軍とそれが繰り出す戦闘獣が日本を襲い、兜甲児はマジンガーZで戦うのだが、負けてしまう。その時、助けてくれたのがグレートマジンガーだった。

 いきなり劇場用アニメでグレートマジンガーを登場させ、九月の新番組の予告をしたのだ。

 テレビアニメと「テレビマガジン」でのマンガは、九月まで『マジンガーZ』として続き、最終回でマジンガーZは大破し、新たなヒーローとしてグレートマジンガーが登場する。操縦する少年も兜甲児から剣鉄也に、ヒロインも弓さやかから炎ジュンへと交代した。

 いわばリセットされるわけだが、同じ世界観の物語として続く。

『グレートマジンガー』はテレビでは一九七四年九月八日から七五年九月二八日までで、「テレビマガジン」での連載は七四年一〇月号から七五年一〇月号までとなる。第一回はタイトルは『グレートマジンガー』だが、物語としては『マジンガーZ』の最終回も兼ねている。

『グレートマジンガー』は視聴率は好調だったが、やはり一年の命だった。玩具の売上が予想ほどではなかったとかで、かくしてまたも打ち切り、新番組への交代が求められたのだ。

 こうして始まる第三作が、『UFOロボ グレンダイザー』で、「テレビマガジン」七五年一〇月号から七七年三月号まで連載され、七五年一〇月五日から七七年二月二七日まで一年半にわたりテレビアニメが放映された。

『グレートマジンガー』は最終回の一つ前の第一二話で、一年前に大破したマジンガーZが復活し、さらに、留学していた兜甲児と弓さやかが帰ってくる。最終回ではマジンガーZとグレート・マジンガーが力を合わせて暗黒大将軍をついに倒す。

 だが、その最後のコマでは兜甲児が「こうして、おれたちの長い戦いは、おわりをつげた」と言ったかと思うと、「やがて静かなたいくつな平和がつづいていった。あの日、おれ、兜甲児がUFOを見た日まで」となって終わる。

 兜甲児が準主人公となるので、『UFOロボ グレンダイザー』の世界観は『マジンガーZ』と同じだが、ストーリーは、宇宙戦争ものになっていく。

 当初は『ゴッドマジンガー』という企画だったが、当時のUFOブームに便乗して、宇宙ものになったという。UFOブームで七五年七月の東映まんがまつりでも、永井豪原作『宇宙円盤大戦争』が制作・公開されていた。これはマジンガーとは何の関係もなかったが、これとマジンガーとを合わせたのが、『UFOロボ グレンダイザー』となる。

『グレンダイザー』もマンガ版が「テレビマガジン」に連載されたが、永井豪自身が描いたのは七六年五月号までの八回だけで、以後は「原作・永井豪、まんが・岡崎優」となる(『マジンガーZ』にもダイナミックプロの他のマンガ家が描いたものもあるが、ここでは「永井豪」作品のみについて書いている)。

 こうしてテレビアニメの「マジンガー・シリーズ」は一九七二年一二月から七七年二月まで、四年三か月、二二二回にわたり放映され、マンガ版も描かれたが、いったん、終了した。

●パラレルワールドとなるマジンガー・シリーズ

だが、永井豪のなかでは終わっていなかった。

『ゴッドマジンガー』が一九八四年四月一五日から九月二三日まで日本テレビ系で放映された。かつて『グレートマジンガー』の後番組として企画されたものと同じタイトルだ。制作は東映動画ではなく、東京ムービー新社になったし、放映局も、フジテレビから日本テレビへ移った。

 マンガ版は雑誌連載ではなく、小学館のてんとう虫コミックスで、描き下ろしとして刊行された。また小説版(永井泰宇、団龍彦、園田英樹)もあり、マンガ、アニメ、小説とも基本設定は同じでもストーリー展開は異なる。主人公は兜甲児ではなく、火野ヤマトという高校生で、ムー大陸へタイムスリップして、大戦闘に巻き込まれていく。ゴッドマジンガーはそのムー大陸の王国の守護神で巨大な像だったが、ヤマトはこの像と合体する。

「マジンガー」はもともと、マシン=機械と、魔神とをかけ合わせたものだったが、『マジンガーZ』から『グレンダイザー』までは「マシン」だったのに、この作品では「魔神」となっている。もはや「ロボット」ではない。

 次に一九九〇年一二月から集英社の「ヤングジャンプ」で『マジン・サーガ』が始まり、九二年三月まで続いたが、未完の状態で連載が終わった。兜甲児、さやか、あしゅら男爵など、『マジンガーZ』のキャラクターが登場し、リメイクともリブートとも言える。

 雑誌では未完だったので集英社からは単行本化されず、一九九七年に加筆されて扶桑社から刊行され、さらに二〇一二年に加筆・再編集して講談社から出されたが、未完だ。最後には『デビルマン』の世界が流れ込んでいる。

『Zマジンガー』というのもある。「月刊マガジンスペシャル」一九九七年九月号から二〇〇〇年一一月号まで連載された。兜甲児以下、最初の『マジンガーZ』のキャラクターも登場するが、別の物語だ。ギリシャ神話の神々は宇宙人だったという基本設定で、神々は地球を滅ぼすと決めたがゼウス(Z)は反対し、地球のために闘い、眠りについていた。再び神々が地球に攻めてくると、兜甲児が遺跡に眠っているゼウス(Z)神からスーパーロボット「Zマジンガー」をもらって戦う。

『ゴッドマジンガー』『マジンサーガ』『Zマジンガー』は、SFとして面白い。これらに登場するマジンガーは、「天才科学者が作った超合金でできているロボット」という設定ではなくなっており、SFとして、さらに進化した。

 特に『マジンサーガ』は、完結すれば傑作となりそうだったが、『デビルマンサーガ』が始まっているので、そちらに吸収されてしまうのだろうか。

 これ以外にも、『マジンガーZ』にはいくつも派生作品はあり、永井豪が描いていないものも含めると、「マジンガー」を冠する作品群は膨大な量となる。

 さらに、巨大ロボットに少年(青年)が搭乗して操縦するというフォーマットを生み、『機動戦士ガンダム』もその延長にある。

●『デビルマン』と『マジンガーZ』のその後

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