消費者のラグジュアリー疲労
『ラグジュアリー・オンライン(Luxury Online)』(2010年)という本のなかで、著者であり、ラグジュアリー・ブランドのコンサルティングを行うルックス・コープ社のディレクター、ウチェ・オコンコウは、
「今の消費者はラグジュアリー・ブランドへの渇望を執拗かつ激しく煽られることに対して、〝ラグジュアリー疲労〟とも呼ぶべき兆候を見せている」
として、人々がもっと本質的でパーソナルなものを求める傾向を論じている。
Luxury Online: Styles, Strategies, Systems
ファッション・デザイナーですら、こういう傾向に無頓着なわけではない。
世界的ファッション・ジャーナリスト、スージー・メンケスが、インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙に書いた記事(2009年3月24日)によると、彼女が司会を務めた、インドのニューデリーでの「IHTラグジュアリー・コンファレンス」において、デザイナーのトム・フォードが、つぎのようなヒントをくれたのだという。
「私に〝サステイナブル・ラグジュアリー(*持続可能ラグジュアリー)〟というテーマを与えてくれたのは、実はワン・シーズンだけの最新流行バッグという概念の生みの親であるトム・フォードだった。
彼はモスクワで催された〝最上のラグジュアリー〟と題するパネルディスカッションで、すでにそのコンセプトが心地良くないと語っていた。
さらに近い将来、環境に配慮したことを謳うタブのほうが、ブランドのロゴよりも消費者に強くアピールするだろう、と」
ラグジュアリーからカジュアルへ。
ファッションを取り巻く環境に大きな地殻変動が起きているのは、間違いないようだ。
もはや見た目の第一印象は重要ではない
では、なぜ人々がこれほどカジュアルになったのか?
東京よりも明らかにスマホ(スマートフォン)率とタブレット率の高いニューヨークの人々の様子を見つつ思ったのは、ソーシャルメディア(オンライン上で、ユーザー同士が情報を交換することによって成り立つメディア)の影響が大きいのでは、ということだ。
地下鉄で、カフェやレストランで、かなりの人がツイッターやフェイスブックに熱心に書き込んでいることが日常化した街のなかで、もはや人々は外見に気を使わなくなってきたのではないか。
by Yagan Kiely
もう彼らは見栄を張ることをやめたのではないか、と。
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