●「性を切り離さずに関係を育む作法」を知らない私たち
性的欲求は、いくつになっても存在する。それ自体は全く自然なことです。それではなぜ、目の前のパートナーと性的な関係を継続すること、それによって家庭内での性的孤独を回避することができないのでしょうか?
その理由の一つに、私たちが「性を切り離さずに関係を育む作法」を知らない、ということが挙げられます。
異性の他者と関係性を築く上で「性を切り離す作法」は、大人であれば誰もが身についている作法です。学校や職場で、異性の相手と一緒に学んだり仕事をする場合、いちいち恋愛感情や性的欲求に囚われていたら、勉学や仕事に支障が出てしまいます。そのため、「クラスメート」「同僚」「生徒と教師」「上司と部下」という役割に沿ってお互いが振る舞うことで、不要なトラブルを回避することができます。
その一方で、私たちは「性的関係のある相手と、フラットな関係を築く作法」「特定の相手と中長期的に性的な関係を持続させる作法」を身につけていません。
二人の関係にセックスが絡んだ途端、その関係は良く言えば「特別な関係」、悪く言えば「排他的な関係」になり、一気に風通しが悪くなります。特定の相手と性的な関係になることで、他の相手や周囲との人間関係が壊れてしまう場合もあるでしょう。
一度セックスをしたから、というだけの理由で相手に対して独占欲を抱くようになり、過度に行動を束縛してしまうこともあります。食事やデートとは異なり、セックスが絡むだけで、お互いにフラットな関係を築くことは一気に難しくなります。