【薄毛対策の極意2】
薄くならない部位の髪の毛を「植毛」する──「5αリダクターゼⅠ型」の酵素をもつ毛を植毛する
・薄くならない部位の髪の毛を移植する「自毛植毛」
「自毛植毛とは、今ある自分の側頭部から後頭部の頭髪を採取し、薄くなった部分に移植する医療技術のことです。薄くなっている部分に自分の毛を再分配して薄毛を改善する「自毛植毛」が、今では世界的に、安全かつ効果の高い方法として認められています」
これまで見てきたように、側頭部・後頭部の毛髪は、薄毛を誘発する男性ホルモンの影響を受けにくいように遺伝子的にプログラムされた『5αリダクターゼⅠ型』の酸素をもつ髪の毛である。そのため、植え替えられた部位でほぼ生涯にわたって生え続ける性質をもっているのだ。
「まず、頭髪の状況を確認し、植毛配分などを相談しながら最終的な治療プランを決めていきます。そして、グラフト(移植用の毛髪)採取のため、後頭部の毛髪の一部を2~3㎜程度の長さまで切り、頭皮を幅1㎝の横長の帯状に浅く採取します。次に採取した頭皮を熟練した看護師が、顕微鏡のもと、毛根単位で三つのサイズのグラフトに短時間で切り分けていきます。その間にグラフト採取部の頭皮を縫い合わせていきます。そして、専門医が毛の流れや生え際、密度を考えながら、植毛予定範囲に1~2㎜程度の小さなスリットをあけ、株分けされたグラフトを移植していきます。この方法を「FUT」(FollicularUnitTransplantation)と言います。 実際の手術は無痛で、日帰りで受けることもできます」
・植毛手術「FUT」と「FUE」──毛根を誤って切断しないことが大切
なお、「自毛植毛」には「FUT」のほかに「FUE」(FollicularUnitExcision)という方式もあります。「FUEでは、細いパンチ(先端が鋭利で中空の金属)で後頭部の頭皮に穴をあけて、毛をくり抜いて、グラフトを採取します。グラフトをとるときに、頭皮を切らない方法です。くり抜いた後には、白色の丸い傷痕が残ります。
髪の長さが約1㎝以上あれば、FUEの傷痕は隠せます。逆に坊主刈りにすると傷痕は目立ちます。この手法では、下手に施術すると毛根の切断率が高くなりがちです。毛根が切断されたグラフトを植えても、正常の髪は生えません。結局、毛根が切断されたグラフトは移植に使えなくなってしまうのです。しかも、元の頭皮にも髪は復活しません」
毛とはいえ、「植毛」も一種の臓器移植手術である。 失敗率の高い毛髪クリニックでは、グラフトを採取する際に毛根を切断してしまい、通常の髪が生えてこなくしてしまうところも多いそうだ。
「私たちの臓器は、血流がなくなっている時間、虚血時間帯が長ければ長いほど弱っていきます。グラフトも同様です。手早く、毛根を誤って切断しない、高い技術の医師を選ぶ必要がありますね。血流がない時間、虚血時間が短ければ短いほど手術後の経過は良好です」
対する「FUT」は、メスを使った手術を行い、後頭部から縦に1㎝くらい×横に10~20㎝くらい毛髪を皮膚ごと切りとる手法である。移植した髪の定着率が85から95%と高く、また、1回に切りとる毛髪の量が多いので広い面積への移植に適していると柳生氏は語る。
ここまでのところで、薄毛を治そうとする場合の適切な治療法を学んできた。遺伝的要因が大きいとはいえ、できることなら日常生活で未然に防ぎたいものである。よく巷で言われる「スカルプシャンプー」の使用や、「海藻を食べると髪が増える」などといった薄毛対策には、効果は期待できるのだろうか。
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