シンガーソングライター・前野健太(左)、詩人・文月悠光(右)
創作へ向かうスイッチとは
文月 私は詩の朗読会によく出ているんですが、そもそも単独の詩人の朗読会というものはあまりなくて、複数の詩人が出演したり、お客さんも参加できるオープンマイク形式が一般的です。ひとつの会で10人以上の方が読まれたりすることもあります。
音楽だと、特定の人の作品の世界観に浸る楽しみ方になりますが、朗読会は全員で言葉を持ち寄るので、読み手も聞き手も割合フラットです。最近は朗読会でラップをする詩人もいて、音楽からの影響は強く受けていると思います。
前野 ……お客さんになって聴いちゃった、すみません。文月さんは詩が書けない時、どんなことします? こうすると書きやすくなるとか、ルーティーンというか。
文月 締め切りとか、メール返さなきゃといったタスクで普段は頭がいっぱいだけど、詩を書く時は、その意識から一旦離れないとだめですね。無意識に入り込むことが大事かなと思います。例えば、ある特定の詩人の詩集を読むことや、音楽を聴くこともその切り替えスイッチのひとつ。夜道を散歩したりだとか。
ただ、手書きだと文字を書いた瞬間に、調子が悪いことがわかるので、今日は書いてもしょうがないと諦めちゃうときもあります。