保守とリベラルの親和性。死者の立憲主義—保守にとっての立憲主義

2018年7月20日、立憲民主党・枝野幸男代表によって行われた内閣不信任案趣旨説明演説は、その内容、格調の高さから憲政史に残る名演説と、大きな話題と共感を呼びました。枝野演説の真髄といえる保守とは、立憲主義とは何か。政治思想家・中島岳志の新刊『保守と立憲』第1章「保守と立憲――不完全な私たち」と第3章「リベラルな現実主義――対談・枝野幸男」を緊急配信! 今回は、保守とリベラル、そして立憲について。


中島岳志(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授)

保守とリベラル

 一方、現代的な意味での「リベラル」という観念は、ヨーロッパにおいて宗教対立を乗り越えようとする営為の中から生まれたものでした。17世紀の前半、ヨーロッパは三十年戦争という泥沼の宗教戦争(カソリックvsプロテスタント)を経験しました。ヨーロッパ人は宗教的な価値観の違いをめぐって、約30年にもわたる戦争を行ったのです。この戦争が終結した時、これ以上、価値観の問題で争うことを避けるため、異なる他者への「寛容」の精神が重要だという議論になりました。この「寛容」が、「リベラル」の起源です。自分とは相容れない価値観であっても、まずは相手の立場を認め、寛容になること。個人の価値観については、権力から介入されず、自由が保障されること。この原則がリベラルの原点であり、重要なポイントとなりました。

「リベラル」の原理は、保守思想と極めて親和的です。繰り返しになりますが、保守は懐疑主義的な人間観を共有します。もちろん、この人間観は、他ならない自分にも向けられます。自分の考えや主張は、完全なものではない。間違いや事実誤認が含まれているかもしれない。自分が見逃している視点があるかもしれない。もっといい解決策があるかもしれない。そのように自分に対する懐疑の念が生れると、当然、他者の声に耳を傾け、自己の見解に磨きをかけようとします。間違いがあれば修正し、少数者の主張に理があれば、その意見を取り入れて合意形成をしようとします。保守の懐疑主義は、他者との対話や寛容を促します。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

大反響!発売即重版!「枝野演説」の原点!

この連載について

初回を読む
保守と立憲 世界によって私が変えられないために

中島岳志

2018年7月20日、第196回国会の実質的な最終日、立憲民主党・枝野幸男代表によって行われた内閣不信任案趣旨説明演説は、その内容、格調の高さから憲政史に残る名演説と、大きな話題と共感を呼んだ。枝野演説の真髄といえる保守とは、立憲主義...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

nhyd_k 中島岳志氏 「自分とは相容れない価値観であっても、まずは相手の立場を認め、寛容になること。個人の価値観については、権力から介入されず、自由が保障されること。この原則がリベラルの原点であり、重要なポイント」 https://t.co/lMHJ9dDk2R 約1年前 replyretweetfavorite

nnaaoo99 話題の枝野演説の真髄、 #SmartNews 保守とリベラルを語る時点で終了。 北大から去ってくれてありがとう。 https://t.co/E0V1vw51ub 1年以上前 replyretweetfavorite

nuruina キチガイ山口の弟子www 話題の枝野演説の真髄、 1年以上前 replyretweetfavorite

WretchedCat 「安倍首相は、中国共産党の政治に対して批判的な姿勢をとっていますが、むしろ中国共産党的なパターナリズムを採用している… https://t.co/ngQq27DRGO 1年以上前 replyretweetfavorite