震災の後、だんだんネット上に投げかける言葉が嫌になった

シンガーソングライターとして今の時代を歌う名曲を発表し、TV、映画、舞台でも活躍、初のエッセイ集『百年後』を上梓し書き手としても注目される前野健太さん。中原中也賞を最年少18歳で受賞、エッセイ集の刊行、アイドルへの歌詞提供等、幅広く活躍をする文月悠光さん。ふたりにとって、詩とは、創作とは、恋愛とは、時代とは、生きるとは。今回は、震災後の言葉について、自分の体験と詩の表現についての話。

震災の後、だんだんネット上に投げかける言葉が嫌になった

文月 前野さんのエッセイの中に、電車で出会ったホームレスの独り言を実際に使ったのかなという箇所があって、とてもドキッとしました。

前野 「こいつは詩人だ」と思うと、街の人の何気ないつぶやきや情景から、言葉を拾い集めるんです。そういう文月さんも結構書かれてますよね、街の声。

文月 電車に乗っている子どもを観察して、こういう歌や手遊びが流行ってるんだ、みたいな発見はありますよね。

前野 やっぱり観察して、何かネタを見つけようということはあるんですか?

文月 さきほど話に出た高円寺の八百屋さんの呼び声が面白いというのは、ある種の、その方の人生の蓄積を見るからなのかなと思っています。そんなだみ声になるまで声を張ってきたということでしょう。

 先日電車に乗っていた時に、お母さんに抱えられた赤ちゃんと目が合ったんですね。その目が本当に、写っているものをそのまま純粋に写し出す目で、可愛いというよりも怖かったんです。その子の目の中に、世界が全部閉じ込められている感覚に陥った。普段はあまりしませんが、印象的だったので、そのことはその場で詩にまとめました。

前野 僕はついさっき見たことを、すぐ歌にするんですよ。なんでかって、歌泥棒ですから(笑)。文月さんは日記を書かれているそうですが、「この感じ使えるな」というネタ帳として書いてます? それとも日記は日記として、割り切っていますか。

文月 日記は10歳から不定期でつけています。書き留めたことが使えるんじゃないかなと思っていましたが、意外に使えないものが多いかな。時間が経って見返してみると、当時思って書いたことと違う印象を得られるので、創作には役立っていると思います。

 日記はその時に起きたことや感じたこと、ありのままを書けるけれど、例えばエッセイには編集作業が発生しますよね。前野さんの『百年後』には「詩のような」という章が中盤、長めに入ってくるんですけど、こちらはWEBの日記に書いたものですか?

前野 自分のホームページに「Life」というコーナーがあったんだけど、日記にも作品にもしたくなかったので、そういう名前を付けたんですね。

 2006年くらいから書きはじめて、震災の後……2012年くらいまでは載っけてたんですけど、だんだんネット上に投げかける言葉が嫌になってやめちゃったんです。

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この連載について

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男と女はわかり合えない。だから歌があり、詩がある。

前野健太 /文月悠光

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gargo_0729 前野さん文月さん対談、第2回です。 “やっぱり高円寺にいる八百屋のおっさんは、僕から見てそのままで格好良いんですよ。” 約2年前 replyretweetfavorite