私たちはいつだってDIYしている
自宅の2階を改装した時には、どうしても壁の一面をモルタルで作りたくて塗ってみた。
DIY、それはDo it yourself. つまりは自分でやるということだけれど、一般的に家周りのこと、家具や修繕を自分自身で行うことを指している。わたしは物心ついた時から自分のものを自分で作ってきた。DIY初体験は中学生の頃。自宅にあった古い木の椅子の座面を引っぺがし、綺麗に磨き、緑のペンキを塗ってから、古布団を切ったものをクッションがわりに入れて、白の帆布を化粧釘で打って、椅子をリメイクしたことをよく覚えている。
当時住んでいたのは、綺麗とは言えない団地で部屋も狭く、家族で肩を寄せ合って暮らしていて、子供心にうちは貧乏なのだなと感じるくらいのみすぼらしい住まいだった。だけど、父はそんなことをちっとも気にすることもなく、自分の好きなように生きているように見えた。私も子供心にそれを受け入れており、割合くだけたもので、平気で友人を家に連れてきたりして、祖母をよく驚かせた。「こんな汚い家によく人を連れて来るね。」と言われたのだが、全く気にならなかった。よい家かどうかは自分にとって問題ではなかったし、父の背中を見て、私はこういう家に住んでいますと胸を張っている方が、人間として立派だと思っていたのかもしれない。
ものに恵まれた生活ではなかったから、欲しいものは自分で手に入れないといけないと思っていた節はある。雑誌に載っているような素敵なインテリアはできないけど、自分の勉強机に合わせる椅子くらいかわいくてもいいと考えたのだろう。父に頼んで祖父が残した古い椅子をもらい、意気揚々とお小遣いで材料を買い、椅子の作りをじっと観察し、見よう見まねで解体して綺麗に作り直したのだった。椅子なんて作ったこともなかったし、インターネットもなかったけれど、よく観察すれば大抵のものを作れると思っていた。
その時にリメイクした椅子は、ずっとお気に入りで、長野に引っ越してきた時に持ってきて、店を始めた10年前、看板を置くために外に出しておいた。その後風雨にさらされて劣化し、結局、また解体してパンを焼くための薪になった。おじいちゃんの椅子でパンを焼いたなんて、我ながらいい話だと思う。
ガンプラからのDIY
夫はとても正確に家具を作る。木はホームセンターで手軽に買えるもの。
夫も物を作るのが好きだった。夫は精密派である。結婚前、夫の家に遊びに行くとガンダムのプラモデルが並べられていて、あまりに綺麗に作ってあることに惚れ惚れしたことがある。それを見ていたら私も作りたくなって、空いた時間に時々二人でプラモデルを買って作っていたことがある。今考えると暇だったなと思う。
そんな二人が一緒に暮らし始めた時には、欲しいものがなければすぐに作るという発想に自然となっていった。最初に二人で作ったのは、15年前のアパートで使っていたレコードとCDラック。探してもアパートの壁にぴったりのサイズがなく、それでもどうしてもぴったりなものが欲しくなった。手書きで図面を描いたものをホームセンターに持って行って、図面のサイズに木をカットしてもらい、インパクト(電動ドライバー)やビスを購入する。大型の棚は作ったことがなかったけれど、市販の本棚を観察し同じような構造で作ることにした。狭いアパートの廊下で組み立てて、オイルステインを塗って仕上げたことをよく覚えている。今思うと、作りも大したものではなかったけれど、当時は部屋にぴったりなことが嬉しくて堪らなかった。始めて作った私たちにぴったりの棚。自宅を建てた時には、その棚はお役御免になって、今は姿を変え店の陳列棚として活躍している。
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