私が欲情する男性は、フェロモンが感じられない人

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回はフェロモンのお話です。フェロモンのある男性がモテると言われていますが、森さんはその逆、フェロモンが全く感じられない男性に惹かれるのだそう。森さんが高校時代に憧れた非フェロモンの男性はどんな人だったのでしょうか。

オスまたはメス的要素の強い人はモテる。いわゆるフェロモンむんむんといった、男性だと細マッチョで目鼻立ちがくっきりしていて、妙に肌艶がいい人がそれにあたるかもしれない。なんとなくズルズル引き込まれてしまう、オーラのようなものがあるのだ。

その手の神通力を認めた上で宣言しよう。私はフェロモンの感じられない人に惹かれる。きっと、どういう風に乱れるのか、あるいは乱れないままで人生を終えてしまうのか、気になるからだ。

真面目な数学教師への妄想

高校時代、非フェロモン系の数学教師がいた。ひょろ長い体型に長方形方の顔、表情はレゴブロックのように画一化されていた。良くも悪くも数学的なルックスである。当時、私の出身校は自由な校風で、というと聞こえはいいがつまり不良(死語)の巣窟で、いわゆる進学校ではなかった。ゆえに先生方もなあなあだったのだが、唯一数学教師だけが至極真面目にきっちり授業をこなしていた。

自由な校風にありがちな、生徒達があっちでもこっちでも恋愛しているような高校で、私は一度たりとも彼氏がいたためしがない。片思いは何度かあったが、スマホもLINEもない時代だ、家電に男子から電話がかかってこようものなら即座に切るという、ものすごく厳しかった両親にはたちうちできなかった。甘やかな思いは、心の中でそっと消去させるしか術がない。だがしかし、制服のスカートの中で密かに膣トレに励んでいた私である(※ 膣トレに見る女の勘違い参照)、エロというか、男女の営みに関しての欲求は人並みにあった。

そう、私の膣トレのおかずは、数学教師が発する清潔な声と黒板に書かれる数式だったのだ。あのトーテムポールのように縦長で面白味のない身体つきで、抑揚もなく感情もこもっていないような口調で、どうやって女をくどくのだろう。いやその前に、どういうタイプの女を好きになるのだろう。おそらく私しか聞いていない授業なのに、ひとり芝居みたいに懸命に講釈をたれる。もしかしたら、とんでもないナルシストなのかもしれない。

理数系のほうが性欲が強い気がする

某漫画に「教師は性欲が強い」と書かれていた(真意の程は定かではありません。教職の方がこれを読んでいたらスイマセン)。これは私個人の意見だが、課目によって性欲に対するイメージが異なる。一般に、解答がやや曖昧な文系よりも、解答がひとつ(とは限らないが比較的はっきりしている)理数系のほうが性欲は強い気がするのだ。明確な解答が出るまでとことん追求するからだ。

やがて私は、数学教師の欲望を妄想するのに飽きてしまった。次なる段階は、数学教師が私達生徒を見てどんなことを妄想するかを妄想することだった。「あいつ眠そうな目をしているな、さては昨夜彼女とやったな」とか「窓の外を眺めるあの子の後れ毛はそそる」とか。

いや、唯一無二の解答を求めてやまない数学教師が、そんな毒にも薬にもならない妄想をするわけがない。きっと、女子の制服のボタンを片手ではずすにはどうしたらいいか、成功の確率を編み出しているのだ。どのくらい時間がかかるのか、手汗ですべってしまう割合や最速ではずすための爪の長さなど、授業をやりつつ脳味噌の片隅で考えているのだろう。

ピンポイントで必ずイケそう
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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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コメント

tsubaki69_a 最初からめちゃ面白いんだけど、最後の最後でドキッとしてしまった 3ヶ月前 replyretweetfavorite