最初に「たとえ」に気づいたのは、金八先生だった

8月18日(土)NHK 総合 23:30〜『たとえBAR』という番組が放送されます。これは、世界初の“たとえトーク番組”。「ことわざ」「人気作家の文章」などを酒の肴(さかな)に後藤輝基、関根勤、壇蜜たちが次々と珠玉のたとえを繰り出していきます。この番組を企画したNHKディレクター細川啓介さんと、番組の構成協力をした『たとえる技術』の著者であるせきしろさんが「たとえ」についてめくるめく考察を繰り広げました。全3回の2回目です(次回は18日に公開)。
同時公開の『たとえる技術』一部公開とあわせてお楽しみください。
番組の一部を先行配信→https://youtu.be/WmVZEY8-q1c

ト書きに「たとえ」を入れて、演者さんとの距離を縮める

細川 『たとえBAR』の番組企画を出したときに、まわりから「こんなん、5分企画やろ」って言われたんですけど、「たとえ」だけで1冊の本にするのって大変じゃなかったですか?

せきしろ うーん、でもたとえって、文章のほうが相性がいい気がします。しゃべるより読むほうがいいというか。

細川 なるほど、そうなんですね。このメソッド? といっていいのかわかりませんが、これは本のために整理されたんでしょうか。

せきしろ これまでに、仕事で言葉をいろいろ置き換えなきゃいけないことがよくあって。「辞書をつくる」テーマの番組のときに「赤」の新しい解釈を書くことになったんです。やってみたら、こんなに置き換えていけるものなんだなって驚いて。そのあとに、全然違う出版社から「たとえの本を出してみない?」って言われて。

細川 そうなんですか。

せきしろ でもそのときの依頼が「たとえ突っ込みの本を出してくれ」だったんです。「でも、僕は芸人さんでもないので」って言ったんですけど。「一応、たとえつくります」って言って、けっこうつくったんです、ガーッと。でも結局、そこはポシャッてしまって。

細川 せっかくつくったのに……。

せきしろ そのあと『たとえる技術』の担当編集さんと知り合ったときに、「全然使っていないたとえがいっぱいあるんです」っていうのを見せて。そしたら「本にしましょう」っていう話になって、編集さんが「ここをこうしたほうがいいですよ」って構成をして、バーッと、結局全部で1,000個ぐらい書きました。


細川 1,000個も考えたんですか!?

せきしろ フリー素材みたいな。

細川 たとえのフリー素材!

せきしろ 最初はフリー素材にしたかったんですけど、結果的にこういう偉い感じにしてもらって助かりました。

細川 すごい、偉い感じですよね。偉い感じになってる。

―(担当編集) 最初にたとえを見せていただいたとき『混雑したフードコートで場所取りをさせられている老人のように寂しい』という一文が目にとまったんです。ただおもしろいだけじゃなくて、切なさとか哀愁が、たった一文でこんなに伝わってくるってすごい。それで「どうやったらそんなたとえがつくれるのか、せきしろさんの頭の中が知りたいです」とお伝えしたら、「こういう考え方がありますよ」というのを書いてくださって、という流れでした。

細川 なるほど。たしかに「短い」「長い」みたいな即物的な形容詞をたとえると、お笑いのボケになりがちですけど、「寂しい」とか、感情が入る形容詞って、たとえることで世界観が強く出ますよね。「寂しい」とか「愛おしい」とか、そういうのに、たとえをフックで入れると「うわあ」ってなる。そういうことって、ねらってつくられてるんですか?

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伝わらなかった感情も「たとえ」を使えばなんだか伝わる。作家が嫉妬する才能の裏側。

たとえる技術

せきしろ
文響社
2016-10-12

この連載について

初回を読む
作家せきしろ×NHK細川啓介 人はなぜ「たとえる」のか?

細川啓介 /せきしろ

8月18日(土)NHK 総合 23:30〜 『たとえBAR』という番組が放送されます。これは、世界初の“たとえトーク番組”。「ことわざ」「人気作家の文章」などを酒の肴(さかな)に後藤輝基、関根勤、壇蜜たちが次々と珠玉のたとえを繰り出し...もっと読む

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