今回は、金持ちと貧乏人について考えてみたいと思います。金持ちは好きなものを買うことができます。貧乏人はそうではありません。なぜかというと持っているお金の量が違うからです。こう考えると、お金はないよりあった方が良いですね。
ただし一方で、お金をたくさん持っているかどうかで人の価値が決まるわけではない、ということもご存じだと思います。お金をたくさん持っているけれども、うらやましくない人っていますよね。どんな人でしょうか?
いろんな人が考えられますが、その有力候補は、金はあるが品がない人です。この金と品の問題について考える上で、便利なのがピエール・ブルデューという社会学者の考え方です。ブルデューは、経済資本と文化資本というキーワードでこの問題について考えました。
経済資本とは、簡単に言うと、お金のことです。では文化資本とは一体、何なのでしょうか?文化資本とは、学歴や教養といった金以外の個人的資産があります。まとめると「経済資本は金、文化資本は品」ということです。
金持ちは2種類に分けることができます。もともと金持ちの家に生まれた人と、金持ちに自分でなった人です。有り体に言うと、前者はお嬢ちゃんお坊ちゃんであり、後者は成り上がりです。どちらも経済資本があるわけですが、文化資本についてはその保有量に違いがあります。
お嬢ちゃんお坊ちゃんは、豊かな家に生まれたので、ピアノを習ったり、フランス料理を食べるときのテーブルマナーを身につけていたりする可能性が高いです。小さい頃から外国人と触れる機会が多く、語学も得意かもしれません。歌舞伎もオペラも知ってます。文化資本が十分あるのです。
一方、成り上がりはフランス料理なんて金持ちになるまで食べたことがないので、テーブルマナーを知らず、皿の両脇にある数々のフォークやナイフたちにおののきます。コースが進むたびに、正しいフォークとナイフを使っているのかどうか、気になってしょうがありません。ラーメンが大好きで、青カビのチーズがなんで旨いのかよく分かりません。文化資本が不十分なのです。
成り上がりは、不足する文化資本を増やす必要があります。このことを考えるときに、ぼくが授業で学生に見せる動画があります。「160万円でバナナの食べ方を学ぶ 中国1%の富裕層たち」という男性ファッション誌『GQ』がネットで配信している動画です。
12日間約1万6000ドルというフィニッシング・スクール(昔で言うところの花嫁学校)のレッスンでは、高級ブランドの発音の仕方とか、ナプキンの折り方とか、エレガントな牡蠣の食べ方など、教えてくれます。牡蠣を食べるときには「顔をお皿に近づけちゃダメよ。中国料理は頭を低くして食べるけれども、欧米では違うの」と指導します。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。