生活習慣を組み込んだ暮らしやすい家

『山の上のパン屋に人が集まるわけ』の公開以来、独自の経営スタイルや働き方で注目を集める「パンと日用品の店 わざわざ」の平田はる香さん。前回、移住するうえで「仕事」と「家」が欠かせないことをお伝えしましたが、今回は、平田さんのこだわりの家づくりについてご紹介します。

家を建てるにあたって検討するべきこと

家を建てるにあたって検討するべきことは、「場所」「建物の作り」「間取り」の3点に集約されるだろう。場所については、通勤やライフスタイル、景観など、人によって重視することは違うので、拠点をスライドさせながら慎重に選ぶことをお勧めしたい。

そして、建物の作り。この辺りは選ぶ工務店や建築士、ハウスメーカーに依存してくる部分があるので、どこのメーカーで建てるか?はたまた建築士に頼むか?ということを熟考すべきである。私たちは最終的に建築士にお願いして、設計ができた段階で各メーカーに見積もりを出してもらい、その中から施工する会社を選んだのだが、そこに至る前に工務店などを相当数回った。私たちが個人の建築士に設計をお願いすることになった最たる理由は、趣味嗜好がフィットするメーカーが見つからなかったから。設計、デザイン、建物の構造や断熱について、全方向から好きだなと感じる家を作っているメーカーには、残念ながら出会えなかった。メーカーでは、完全にカスタムすることは難しく、どれかを妥協して家を建てなければならない。(もちろんそれでいいとなれば話は別。)一生に一度の買い物で、ずっと共に暮らしていく家。私たちは爪の先まで全部自分たちで考えたかった。

建築士ならば、私たちの要望を聞きながらアドバイスもくれ、双方の意見を出し合いながら図面を引いてくれる。時間はかかるけど、全部知りたい、全部自分たちで決めたい人には、おすすめしたい。ただし、建築士によっては俺のやりたいようにやるというタイプの人もいるだろうし、人にはよると思う。だからメーカーにしろ、建築士にしろ、まずは誰(どこ)に頼むかを決めることはとても重要だと思う。

さて、最後の間取り。これは住んでからの満足度を上げるために、徹底的に考えることを推奨したい。一時的にではなく、将来にわたって住む家になるので、可変性も考慮しながら、考える必要がある。最初は二人暮らしであっても、子どもが増える可能性だってあるし、親との同居が視野に入ることもあるだろう。来客の多い人、少ない人、会社を辞めて独立する人もいるかもしれないし、料理しながら洗濯したい人だっているかもしれない。昼間は家にいるのかいないのか、台所に立つ人の身長は高いのか低いのか、そんな些細なことでさえ、長く暮らすと住みづらさを感じていく。まずは自分たちが将来に渡って、どんな暮らし方をしたいのかをよく考える必要があるのだ。

平田家の場合。

平田家では、リサーチ段階では夫婦で情報をかき集め、知識を共有していって、いざ建てるとなった時に役割分担をした。構造と断熱、外観についての担当は夫。私が間取りと内装だ。私たち夫婦は、性格がとても対照的で、考えることや性質が全く違う。夫はとても几帳面で間違いなく確実に仕事をこなせるタイプだが、独創的なアイディアや想像力を働かせて何かを作ることは苦手だ。反対に私はざっくりしていて忘れ物が多くスケジューリングも下手くそだが、想像力と好奇心が旺盛で新しい物事にも進んで取り組むタイプだ。

私たち夫婦は得意不得意が真逆の性質で、二人で助け合うと、とてもいいことが起こることが長年の付き合いでわかっていた。だから、家を作る時もすぐに役割分担をすることになったのだ。これはわざわざの社内でも活かされていて、部署を分け別業務を担当している。夫は3年前サラリーマンを退職し、わざわざで共に働くようになった。夫婦で一緒に仕事をして別意見になった時ほど、辛いものはない。親密さからお互いのテリトリーを越えて、言い合いになることも多い。大体の方向性はもちろん一緒に話し合ったが、決定権を互いに分け合ったのは合理的でとてもよかったように思う。

当時、料理や家事はほとんど私が行っていたので、私が作業しやすいように間取りを考えた。アパートに住んでの不満点を書き出して解消し、自分の性格も留意して、ざっくりと空間を仕切れるように自由度を高くした。あまり空間を仕切らないことで建具の数を減らし、ローコストも心がけた。素材は妥協したくなかったので、目立つ建具や壁などはお金をかけて、反対に納戸などは仕上げもせず、また自分たちで家具工事を行うなど、メリハリをつけて計画をしたのだった。

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わざわざ平田の思索日記

平田はる香

長野県東御市にある「パンと日用品の店 わざわざ」。山の上の長閑なこの場所に、平田はる香さんは2009年にひとりでお店を開きました。平田さんがnoteで公開した記事「山の上のパン屋に人が集まるわけ」が大いに反響を呼び、独自の経営スタイル...もっと読む

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コメント

3839Ay @wazawazapan 私たち夫婦は得意不得意が真逆の性質で、二人で助け合うと、とてもいいことが起こることが長年の付き合いでわかっていた。https://t.co/W0GfJJdFqf 「二人で助け合うと、とてもいいことが起こる」っていう言葉のセンス、好き。 2年弱前 replyretweetfavorite

sadaaki 建築は施主が自分のほしいものを考えれば考えるほど快適なものが手に入るよね。 約2年前 replyretweetfavorite

yoshinon 素敵な住宅です。 約2年前 replyretweetfavorite

tabuchii これくらい自分達の要望が分かっている施主さんだと設計する側としては本当にやりやすい。 約2年前 replyretweetfavorite