写真で話そう

ポートレート写真には人間関係が写る

写真は基本的には現実の世界を写し出すものです。ではなぜそれが多くの人を魅了し、数多くの芸術的な作品を生み出してきたのか。それは、写真には目に見えるもの以上のものが写ってしまうからかもしれません。今回は、ポートレート写真に写る人間関係についてのお話です。

ワタナベアニです。写真はそこにあるモノや人を、レンズを使って冷徹に描写するんですが、撮る側の姿勢でその視線は冷たくも優しくもなります。今回は、ポートレート写真には人間関係が写る、というお話を。

たとえば、今回の5枚の写真。写っている人との関係を説明するために様々な種類をセレクトしました。彼らは全員、俺のカメラの前で違うことを考えていて、それがちゃんと写っています。

簡単なたとえで言えば「恋愛の持つ距離感」と似ています。まったく知らない初対面の人に惹かれた時。知り合いではあるが恋愛感情はない。できれば恋愛対象として互いを意識したい願望、などです。わかりやすいポイントのひとつは視線にあります。

最初の写真はParisのグザヴィエ。俺の正面にしゃがみ込んで、隣の人と話しています。カメラは意識していません。これは片思いの構図ですね。次にエマニュエル。見た目はゴツいですがとても繊細な人で、カメラに気づくのを待ってから撮りました。自分の存在を知ってくれたときの顔です。モデルのKikkaさん。「窓の外を眺めている」ように見えますが、カメラを向けられているのがわかった上で演技をしています。台北の男の子。何をされているのかわからないままに撮られています。視線は合っていますが、俺との心の交流が生まれるにはまだまだ時間がかかる。最後に友人のホームレス小谷。俺との関係が濃く、撮られ慣れているので、人間という動物ができる限界までリラックスした顔です。

さて、皆さんが撮った写真を見返してみてください。相手との関係が、自分が思ったとおりに写っているでしょうか。お酒の席で大勢がグラスを持ってピースしている、という写真がありますが「はい、集合写真を撮りますよ」とカメラを向けられるとき、ほとんどの人は笑っていても、カメラを持っている人への感情はゼロです。

写真にその人との大切な関係が写ると他人にバレてしまうので恥ずかしいですけれど、それが写った方が「いい写真」になるんじゃないかと俺は思っています。

ParisのレストランLe Cetteのグザヴィエ。この前はファッションモデルをしてもらいました。

Paris。ギャラリストのエマニュエル。超人ハルクのようにカッコいい。

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ワタナベアニ

写真家・ワタナベアニさん。年中無休、四六時中、カメラのシャッターを切り続けています。この連載ではそんなワタナベアニさんのライフワークともいえる、ポートレート写真を掲載していきます。レンズのむこう側で写真家は何を思っているのか、その様子...もっと読む

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コメント

yutoma233 台北の男の子素敵。すごく物問いたげな顔してる。通りすがりだから撮れる写真もあるんだな。家族には切り取れない瞬間。 / “22024” (1 user) https://t.co/XDPrcRjWN3 9ヶ月前 replyretweetfavorite

uk_dfsz これ、わかる。 だから私には 9ヶ月前 replyretweetfavorite