中編】漫画家・清野とおるを生んだ伝説の番組「何だ?こりゃ」とは?

ゴハンスキー⑤』『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!⑤』『Love&Peace~清野流・居酒屋&スナック攻略術~②』を同時発売した漫画家、清野とおる。そんな彼が多大な影響を受けたテレビ番組がある。『突然変異報道番組 何だ?こりゃ』だ。わずか5か月のみ放送された番組の何がスゴかったのか!? 今回、番組の仕掛け人で現フジテレビジョン取締役西渕憲司氏を清野が直撃、怒涛の1万字対談がここに実現!

『何だ?こりゃ』の元タイトルは全然違った

清野 たしかに舛添さんの存在は輝いてましたね。当時は舛添さんがどういう人か知りませんでしたけど、『何だ?こりゃ』に出てる人というだけで、僕の中ではアイドルでした。その後、知事になって公費の使い込みで表舞台から姿を消してしまいましたけど、僕にとっては、永遠に(エターナル)『何だ?こりゃ』の舛添さんなんで、責める気にはなれなかったんです。舛添さんはじめ、どなたも欠くべからざるMCの御三方ですけど、あの最強の布陣はどうやって決められたんですか?

西渕 まず、舛添さんMCで何か番組を作りたいという話を当時の報道局長からされたんです。で、『報道違反』というタイトルの番組を考えて企画書を書いたんです。ちょっとタブーっぽいネタを扱おうということで『報道違反』。そしたら、局長から「報道しちゃいけないものを報道したらいかんだろ」と怒られまして、まあ、その通りだなと思って、今度は『ダメだ、こりゃ』というのを考えた。

 今度は、ネガティブなタイトルは当たらないとボツにされて、さらに練り直して『何だ?こりゃ』に至るというわけなんです。ですので、舛添さんありきの企画で、舛添さんのキャラクターがより生きるような布陣を組んだという感じですね。 今でも舛添さんと話すと、「なんか変な番組だったね」なんて言ってくれますよ。大竹さんも面白がってくれてたみたいで、「おもしろい番組だったよね」なんて話で盛り上がることがあります。

清野 大竹さんといえば、ロケ先の一般人から中継で激怒されてた記憶があるのですが、あれは何の回でしたっけ? 2人のやりとりを「何だ?こりゃ」と思って観ていたことを覚えているんですが……。なんかすごい狭い車庫があって、そこに無理矢理クルマを停めるような回ってありませんでしたっけ?

西渕 ああ! 「車庫入れの達人」!! あったあった! 懐かしいな~。いま、清野さんのおかげで失われた記憶がドバドバ蘇ってきてますよ。うんうん。あれは、すごい狭い車庫なんだけど、どうしてもプレジデントってクルマが欲しいと思った人がいたんですよ。そんなに狭い車庫なんだから、小さいクルマにしとけばいいじゃないですか。プレジデントって日産の高級車で、かなりゴツいんです。なので、その車庫に駐車するのは至難の業。で、結果的に駐車の超絶技巧を編み出してしまったという話なんです。

 これって、なんかすごく人間っぽくないですか? プレジデントに対する保有欲をガマンできなくて、駐車能力を進化させてしまうという。私はこういう人間の「業」とか「エゴ」みたいなものが、図らずも世の中に露呈してしまっている瞬間に立ち会うと、無上の喜びを感じでしまう性質(たち)なんです。それに、そういう人たちって、なんか「かわいい!」って思っちゃうんですよね。

自然と「業」が流れる人は「かわいい」

清野 それ、すごくわかりますよ、お母さん。自然体で「業」を垂れ流している人たちって、「かわいい」ですよね。相手にするのは面倒くさくて仕方ないんですけど、何をやっても憎めないというか。たまに「俺、こんなおもしろいことをしてるから取材して漫画にしてはどうですか?」みたいなご提案をいただくことがあるんですけど、そういうことじゃないんですよね。

「図らずも」ってのが重要なんです。人の目を意識してチラチラと反応をうかがってくるようなものは、萎えちゃう。「天然物」といいますか、無意識に垂れ流されている他人の「業」を垣間見たいんですよ。

西渕 ですよね。これは今でも名作だと思ってるんですけど、渋谷のとあるファストフード店で、ガラス張りのカウンター席が路上から見上げるような位置に配置されている店があったんです。お客さんは何にも知らずにカウンター席に座ってるんで、女性のお客さんだと見られちゃうんですよね、パンツ。で、そこを通る男性は、全員がチラチラと上を見上げて歩いている。もうすでに、これだけでもおもしろいなと思って一日中、「見上げる男」を撮影してたんです。

 そしたら、ずうっとカウンターに座っている女性がいることに気づいたんですよね。ん? なんか、おかしいなと思って、その女性が出てくるのを待ってインタビューしたんです。そしたら、「パンツ、見られることを知ってて座ってました」って答えるんですよ。週に何回かは、お店に来て、カウンターに座って、男たちが自分のパンツを見ているなって思うのが楽しいんですって。これは痺れましたね~。

清野 まさに天然物の「業」ですね! その回は残念ながら拝見してないのですが、そのまま放送されたんですか?

西渕 ええ、そのまま。モザイクもなしですね。もちろんパンツは映してないですが、「見上げる男」やパンツを見せる女性の顔はモザイクかけずに流してました。当時は大らかな時代だったんで、なんにも言われなかったんです。今だったら大変なことになってますよね。

清野 そうですか~。じゃあ、再放送はできないですね~。そうか~……。でも、フジテレビさんには録画された番組のテープがあるんですよね? あの~……(もじもじ)、もしよかったら、そのテープを…… 僕に見せていただくことは……(もじもじ)。

ここぞとばかりに"お母さん"に映像素材をおねだりする清野西渕 ええ、いいですよ。じゃあ、明日さっそく局の担当に申請しておきましょう。

清野 うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! ありがとうございます!!! そういえば、あのテープはありますかね!? 大きな道路の中央分離帯に犬が住んでいてっていう。

西渕 ああ、「同情の飽食」ですね。あると思います。しかし、よく覚えてますね~。いろいろ思い出してきましたよ。そうそう、あのネタも投書だったんです。千葉のほうだったと思うんですけど、国道の中央分離帯に住んでる犬がいるっていう内容で。まあ、それだけだと、おもしろくなるかどうかわからないんだけど、ネタにも困ってたんで、とりあえず現地に行ってみたんです。

 で、いるんですよね、犬が。しかも、結構太ってるんですよ。犬、太ってるな~と思って見ていたら、いろんな人がクルマで乗りつけて、お弁当の残りとか、焼き鳥とか、パンとかをいろいろあげてるんです。人々、どんどんエサあげる→犬、どんどん食べる→犬、どんどん太るという構図で、太りすぎて首輪がぎゅうぎゅうに締まっちゃってて、いかにも苦しそうなんです。

清野 それで、タイトルが「同情の飽食」。なかなか皮肉が効いてますね。みなさん、エサだけ好き放題にあげて、犬を引き取ったり、首輪を外してあげないあたりが、話をよりそそられるものにしてますよね。同情が、わがままというか。

西渕 そうそう、犬に同情するのはいいんだけど、わがままなんですよ。でも、そこが人間くさくて、いいんですよね。犬かわいい、エサあげたい、でも、太ることまで考えないという“隙”がある感じがね。取材は一日中やってたんで、犬に与えられるエサを記録してカロリーを計算してみたんです。

 そしたら、ものすごい量のエサを食べてるんですよ。3500kcalとかだったかな。普通の犬に必要なカロリーの3倍くらい摂取しちゃってるんですよね。そんなに食わすんじゃないって。ほんとに「わがままな同情」なんですよ。

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清野とおる「おこだわラブスキー」特集

清野とおる /SPA!編集部

先日、『ゴハンスキー⑤』『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!⑤』『Love&Peace~清野流・居酒屋&スナック攻略術~②』を同時発売した漫画家、清野とおる。彼が、中学2年生のときに目撃し、多大な影響を受けたと語る、...もっと読む

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