後編】漫画家・清野とおるを生んだ伝説の番組「何だ?こりゃ」とは?

ゴハンスキー⑤』『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!⑤』『Love&Peace~清野流・居酒屋&スナック攻略術~②』を同時発売した漫画家、清野とおる。そんな彼が多大な影響を受けたテレビ番組がある。『突然変異報道番組 何だ?こりゃ』だ。わずか5か月のみ放送された番組の何がスゴかったのか!? 今回、番組の仕掛け人で現フジテレビジョン取締役西渕憲司氏を清野が直撃、怒涛の1万字対談がここに実現!

赤瀬川原平と、街が持っている「熱源」

西渕 ひとつ好きな話があって、私が番組づくりにおいて多大な影響を受けたもののひとつに、赤瀬川原平さんの『超芸術トマソン』という本があるんです。その本の表紙は麻布谷町という街にあった天徳湯という銭湯の煙突の上に立って、魚眼レンズで街の風景を撮った、奇妙で素敵な写真なんですね。

 結局、その一帯はアークヒルズというビルが建つことになって、すべてが取り壊されてしまうんですが、ひとつ爽快な話があるんです。取り壊しによって、そこに生きた人々の生活や記憶も含めて何もかも全部真っさらになってしまって、ゼロから全く異なった思想の新しい街が建ち上がっていって、今のアークヒルズというビルができるんですけど、実は銭湯の煙突があった、まさにその場所にアークヒルズは新しい煙突を設置してるんです。偶然ではあるんでしょうけど、どんなに街の形が変わっても、街がもともと持っていた“熱源”というのは変わらないんだなと思うことができて、すごく好きな話なんですよね。

赤瀬川原平『超芸術トマソン』(ちくま文庫)

 偶然の一言では片付けられない不思議な話ですね。実は赤羽もここ十年ちょっとで、だいぶ変わっちゃったんです。前は、こんな小ぎれいな街じゃなくて、もっと掃きだめみたいな刺激溢れる街だったんです。都市開発が進むたびに、すごく寂しい思いをしていて。でも、見てくれは確かに変わってしまったんですけど、本質的な部分は変わってなかったということに、あるとき気づいたんですよね。

 街が変わると、そこにいた人もいなくなってしまうんですけど、しばらく経つと、まるでバトンを渡されたかのように別の人が来て、立ち去った人と同じような存在として、そこにいてくれるんです。それに気づいたときに、街の本質って変わらないだなと思うことができて、なんだか無性に安心したんです。

西渕 それは多分、清野さんだからこそ見える街の風景なんでしょうね。そんな交通事故だったら、私も遭ってみたいですよ。対談の初めに、『何だ?こりゃ』やってる時に赤羽に来ていたら、いろんなネタを採取できたかもしれないというようなことを言いましたが、『赤羽』に描かれているような風景は、私には決して見ることのできない清野さんだけのものなんだろうなと思いはじめました。

 視(み)える人しか視えないというような。そんな視える方に番組を観ていただけて、こんなにお話しすることができて、テレビマンとしては感無量ですよ。今後の人生の中で、こんなにも濃厚に『何だ?こりゃ』の話をすることは二度とないと思いますので、今日はいい思い出になりました。

清野 僕としては、まだまだ、その『何だ?こりゃ』、俺にもくれよ!!という気分なんですよ、お母さん。

西渕 いや~、うれしいことを言ってくれますね。もうこうなったら、『何だ?こりゃ』、あげちゃいますよ。とおる、お母さんの『何だ?こりゃ』もらってくれるかしら?

番組内でスタッフが着ていた激レアなジャンパー

清野 あー! 『何だ?こりゃ』ジャンパーだ!! え? いただいてしまっていいんですか? わー! うれしいな~!! 早く冬が来ないかな~。あといくつ寝ると冬がくるかな。それまで死なないで生きられる気がしますよ。さっそく着てみます。

西渕 おっ、よく似合ってますね。110番台は、現場のスタッフが着ていたジャンパーの番号なんです。一桁のものはディレクターが着ていて、私は曲がりなりにも「案内人」なので、普段は01番を着ていたんですけど、現場に出る時は、いま清野さんが着ている118番を着ることもありました。

清野 じゃあこれ、西渕さんが着ていたものなんですか!? ウワーッ、うれしすぎます!! あっ! 袖にシミがついてますね! これ何のシミだろう。もしかして、「同情の飽食」のときに犬が食べてた焼き鳥か何かのシミですかね?

西渕 いや、ちょっと覚えてないですけど、このジャンパーが日の目を見ることはないと思ってたんで、タンスのずーっと奥のほうに収めておいたんですよね。ちょっと、防虫剤のニオイがすると思いますけど。長年保管してたんで、保管中についたシミなのかもしれないです。サイズはXLなんですが、お身体に合いますかね?

清野 正直にお伝えしますと、少しブカブカかなーとは思いますが、それは僕が悪いんです。僕のこの貧弱な身体が悪いんです。「何だ?こりゃイズム」の継承者としては、今後、XLの『何だ?こりゃ』ジャンパーに見合う大きな男になるべく精進いたします。

西渕 いやいや、もう充分『何だ?こりゃ』を超えているというか、清野さんにしか出来ないXLサイズの素晴らしい仕事をされていると思いますよ。

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清野とおる「おこだわラブスキー」特集

清野とおる /SPA!編集部

先日、『ゴハンスキー⑤』『その「おこだわり」、俺にもくれよ!!⑤』『Love&Peace~清野流・居酒屋&スナック攻略術~②』を同時発売した漫画家、清野とおる。彼が、中学2年生のときに目撃し、多大な影響を受けたと語る、...もっと読む

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