◆オビにするか、タスキにするか?
やや強引だが、話を分かりやすくするために、長編を着物のオビに、短編をタスキに例えてみよう。
オビは、布地にかなりの幅と長さがあり、遠目からでもそれがオビだとはっきり分かる。離れた所から、全体の優雅さを鑑賞することもできれば、近寄って、細部の刺繍や飾りを楽しむこともできる。生地が広くて厚い分、結び部分の構造もしっかり見えるから、自分で結べる結べないは別として、「ここ、どういう仕組みになってるんだろう?」というような疑問はあまり生じない。
つまり、長編は全体として太く通った一本の筋があって、多少細部に分からないことがあっても物語を楽しむのに問題はない、という特徴がある。複雑に見える作中の技巧などは、刺繍や飾りと同じで、近寄れば分かるし楽しめるが、それに気付かなかったからといって、物語そのものが成り立たなくなるわけではない。
長編においては、ダブルプロット、トリプルプロットのように、
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