じゃんじゃん売れても品切れしないシステム」としてのスーパー

いまや、生鮮食品や日用品を買う場所として、当たり前のようにあるスーパー。しかし、スーパーが現れた当時は、「こんな商売は、スーって出てきてパーっと消えるもの」と言われていました。私たちの生活にあって当たり前の存在になるまでに、どのような工夫がなされてきたのでしょう。その背景には、良いモノを効率良く提供する仕組みが回り続けています。以前の連載で触れた、スーパーの面白さ・奥深さについて考えます。

伊丹十三監督の『スーパーの女』という映画を、ご存じですか? ぼくは毎年の授業で、この映画を学生に見せています。1996年公開のこの映画は、学部生からすると、生まれたか、生まれる前ぐらいの大昔の映画です。

この映画では、スーパーマーケットのバックヤードで行われている店内加工など、普段、お客さんから見えない裏側を面白くかつリアリティ溢れるストーリーで描いています。職人が仕切る八百屋、肉屋、魚屋という業種店の寄せ集めから、近代的なオペレーションでパートでも新鮮な生鮮食品や総菜などをタイミング良く提供できるようになるというスーパーの進化の歴史が分かるとても良い映画です。

この映画の原作は安土敏という小説家が書いた『小説スーパーマーケット』です。挫折や絶望といったリアリティにも迫る原作と違って、映画は伊丹作品の常道として、徹頭徹尾エンタテイメントを貫いていて、とても面白いです。そのためか、学生はフィクションだと思うようです。そこで映画を見せた次回の授業で、この映画の背景を説明しています。

安土敏は、首都圏に店舗を多く持つスーパーマーケットチェーンのサミットの社長(公開当時)の荒井伸也氏であること、伊丹監督がサミットや関西スーパーマーケットの店舗を視察したり、『小説スーパーマーケット』などを参考にしたりしてシナリオを書いたこと、荒井氏自身も住友商事から転出してサミットに参画したことなど説明します。

安土名義で1987年に著した『日本スーパーマーケット原論』によると、この小説は、1980年1月から13ヶ月間、『販売革新』誌に連載した『他人の城』がもとになっているそうです。単行本になるとき、編集者から「もっと経済小説らしい題の方がいいのだが」と言われた時のやりとりを、以下のように回想しています。

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