「市場シェアと収益率? バリューマックス社はトップシェアですよね。うちは3番手くらい。利益もたしかバリューマックス社のほうが高かったような気がしますけど。でも、価格戦略と関係あるんですか?」
「商品プランナーにしては、ちょっと大ざっぱすぎです」
与田は例の人を小バカにしたような笑みを浮かべる。
「バリューマックス社のシェアは32%で、当社は10%。ウチのビジネス規模はバリューマックス社の3分の1程度です。利益率もバリューマックス社のほうが3倍も高い。つまり、この市場では、バリューマックス社が〝マーケットリーダー〟で、我々駒沢商会は〝マーケットチャレンジャー〟だ、ということです」
(だから、それがなんなのよ。チャレンジャーだから、S社のように価格勝負で挑戦して、勝ちに行くんじゃないの!)と思う久美だったが、今回はおとなしく与田の話に耳を傾けてみることにした。与田の説明が続く。
「これは価格戦略を考えるにあたって必ず押さえておかなければいけない要因です。ウチが利益をギリギリに削って半額で売りはじめた途端、バリューマックス社は7割引で売りはじめることだってできるんです。そうなると、ウチはさらに値引きをせざるを得なくなる。価格戦争の結果、ウチはどうなると思いますか?」
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