泥沼どころか地獄だった脚本家修業時代

今や「女性秘匿捜査官・原麻希シリーズ」、「新東京水上警察シリーズ」、「警視庁53教場シリーズ」、「十三階シリーズ」など、女性には珍しい警察小説の書き手として注目を集めている吉川英梨さん。彼女はいかにして小説家になったのか? その異色の経歴から、作家になる秘訣や好きなことをしながら生きるヒントを読み解きます。はたしてコギャル(?)と脚本家修業の両立は実を結ぶのか?(企画・聞き書き:アップルシード・エージェンシー

「言ったもん勝ち」の企画会議で何も言えずに帰ることも

コギャルと脚本家修業。

最高に楽しい学生生活だったのですが、就職活動の時期は迫ってきます。

そうは言っても、就職活動なんて、全然やる気がない。超氷河期だし、親の手前、なんとなくやっているだけですから、どこにも受からない。 最終的に、カメラや映像関係の技法書で知られる玄光社という出版社に、営業事務職として入社しました。読書好きだったり、シナリオの勉強をしたりしていたのが、功を奏したのかもしれません。

雑誌や書籍の在庫管理も担当していたので、売れ行きの悪い本は「はい、これ断裁、これ断裁」って事務的に処理をしていました。今でも、自分の本が売れないと、「ああやって断裁されちゃうんだろうなあ」と想像してしまいます(笑)

人生の中で一番本を読んだのは、この頃でした。綾辻行人さんや有栖川有栖さんなどの新本格、鈴木光司さんや貴志祐介さん、篠田節子さんなど、当時人気があったミステリやホラーなどのエンタテインメント小説は、毎週のように書店で買いこんで読み漁っていました。

シナリオセンターの作家集団として登録されていたので、テレビ局から時々オーダーが入るようになりました。といっても、私に「こういうものを書いてください」と言われるのではなく、テレビ局のドラマ企画会議に何人も呼ばれる中の1人。企画会議に行くと、アイデアや意見を言わなきゃいけないんです。

正直、言ったもん勝ち。

まわりは年上の手練れのOLばかりで、あからさまに

「あなた、まだ20歳なの?」

と鼻で笑われるようなこともありました。私は一対一の関係や少人数のグループだと大丈夫なのですが、人見知りだし、そういう場がどうしても苦手で、何も言えずに帰ることもよくありました。

がんがんいける人が採用されていくのを目の当たりにして、物語を書くのは大好きなのに、一歩突き抜けられないという悩みを抱えるようになっていました。

そんな自分を変えたかった。

単純なんですけど、「よし、じゃあ、留学しよう」って。

そして、アメリカ合衆国西部のサンディエゴに向かったんです。

メキシコと接しているサンディエゴは、気候も良くて開放的な場所。親元から解放された喜びで、勉強もせずに遊びまくっていました。「自分探し」というと、海外留学を考える女性も多いですけど、実際、外国で生活したぐらいで自分の性格なんて変わらないですよね(笑)

当初は半年の予定だったのですが、現地のカレッジに通う日本人の彼氏もできたので、資金が尽きてVISAが切れるまで、結局1年程アメリカにいました。

東映のプロデューサーとの出会いと訓練の日々

やや迷走気味の私でしたが、この頃、私の「警察小説家」としての土台を作ることになる人との出会いもありました。

それは、当時、東映のアシスタントプロデューサーだった土田真通さんでした。

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コギャル(?)だった私が、警察小説家になるまで—「好きなこと」を仕事にする道

吉川英梨

宝島社ラブストーリー大賞「エンタテイメント特別賞」を受賞してから10年間、小説家として活躍してきた吉川英梨さん。今や「女性秘匿捜査官・原麻希シリーズ」、「新東京水上警察シリーズ」、「警視庁53教場シリーズ」、「十三階シリーズ」など、女...もっと読む

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feilong “21883” https://t.co/DwLjhF6J0Y 約1ヶ月前 replyretweetfavorite