写真で話そう

黒バックの前に立てば条件は皆同じ

写真家・ワタナベアニさんの連載、第二回。世界中でポートレートを撮っているワタナベアニさんは、常に背景用の黒いシートを持ち歩いています。なぜ黒バックで撮ることを好むのでしょうか。

ワタナベアニです。俺が黒バックでポートレートを撮る理由はいくつかあります。ひとつは人物に視線を集中させ、邪魔になる情報を切り捨てるためです。また、舞台に立つ主役のイメージを強調させるスポットライトの効果もあります。それと「どこに属している人なのか」をわからなくする目的もあります。

たとえば、今回の写真は様々な場所で撮っていますが、そこがParisであろうと東京であろうと何も関係ありません。世界中どこへでも持ち歩いている黒布をセットすれば、いつも同じ写真が撮れます。見知らぬ土地に行って珍しい風景を撮るのもいいんですが、ヨーロッパなどは19世紀から街の様子が何も変わっていません。ほぼ隔月のペースでヨーロッパに行きますが、何度行ってもオペラ座はオペラ座のまま。でもその前を歩いている人は毎日違うので、人物を撮っているのです。

ポートレートは属性に頼ると面白くないと思っています。学生服、つなぎ、スーツ。それらを着ていれば学生かガソリンスタンドの人かサラリーマンかがわかる。そういう分類情報に近いシンボルを説明に利用しすぎると写真はつまらなくなります。セーラー服を着た女子高生が海辺を走っていれば「青春」を想起させるかもしれない。でもそれは、女子高生に女子高生のコスプレをさせているように、見慣れた既成概念にはめ込むことになりがちです。

写真には「謎」が残っていた方が楽しくて、説明しすぎは受け手の想像力をナメることになります。

Paris。友人です。

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ワタナベアニ

写真家・ワタナベアニさん。年中無休、四六時中、カメラのシャッターを切り続けています。この連載ではそんなワタナベアニさんのライフワークともいえる、ポートレート写真を掲載していきます。レンズのむこう側で写真家は何を思っているのか、その様子...もっと読む

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コメント

watanabeani cakes連載「写真で話そう」 。 https://t.co/dR4PNrOHFW https://t.co/eIuVVYZCgn 約2年前 replyretweetfavorite

sadaaki アニさんの写真は、ひとの素の感じが写ってるのがすごいなあと思う。 約2年前 replyretweetfavorite