嫁が怒っているので先にドロンする」というジェスチャーは伝わるか

日本人は、言葉による説明がなくても、「空気」で相手の考えや状況を読み取ることを求められる場面が多い社会に生きています。一方で、その「空気」が実は、他の国の人にとっては理解できないということも忘れてはいけません。いくら「おもてなし」を追求しても、現地の消費者が、そもそも気づきすらしない可能性もあります。グローバル・マーケティングで、気をつけたいことについて考えます。

日本では「空気をよめ」とよく言いますね。空気が読めない人は、KYと呼ばれ揶揄されます。こうした言い方は、言葉でいちいち説明されずとも、相手の意向や集団のコンセンサスを読み取るべきだ、という価値観に基づくものです。

言葉にせずにコミュニケーションをすることを、ハイコンテクストと呼びます。日本はハイコンテクストな社会と言えるでしょう。こうした社会では、身振りやジェスチャーが多く使われます。

授業で説明する時に出す例が、(a)片手の小指を立ててから、(b)両手の人差し指を角のように頭の両脇に付けて、(c)忍者がよくやっている両人差し指を立てるポーズをするというジェスチャーです。実際にやってみて、「これってどういう意味?」と学生に聞きます。

多くの学生はアタマの中が「?」だらけになって、きょとんとしているのですが、物知りの学生が、「男の人が、呑み会とかで一緒に呑んでいる相手に『(a)うちの嫁が(b)怒っているので(c)先に帰る』ということを伝えるジェスチャーだ」と答えてくれます。社会人だと、だいたいの人がこのジェスチャーの意味を知っています。このようなジェスチャーは、同じ社会であっても知らない人もいるという意味で、非常にハイコンテクストです。

昔の総理大臣で揚げ足を取られないように、「言語明瞭、意味不明瞭」な答弁を繰り返す人がいました。このようなことが可能だったのは、ハイコンテクストな社会だからです。

ハイコンテクストの逆がローコンテクストです。ローコンテクストの社会では、言語による明確なコミュニケーションが求められます。「言語明瞭、意味明瞭」ですね。日本人と違って、アメリカ人はローコンテクストだと言われます。

物事をはっきり明確にして説明しないと気がすまない人たちですから、例えばアメリカでは比較広告がよく見られます。競合しているブランドに比べて25%長持ちするとか安いといったことを強調します。一方、日本では明確に比較することが視聴者に好まれていません。そのため競合ブランドより優れていることをハイコンテクストな形で伝えないといけないのです。

ハイコンテクストとローコンテクストの違いは、グローバル・マーケティングをするときに直面する壁になります。

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松井剛

何気なく使っているマーケティング用語。そのことばの裏には、あなたのビジネス、さらには世の中の見方を変える新たな視点が隠れています。一橋大学経営管理研究科・松井教授が、キーワードをゆったりと、しかし的確に解説するこの連載。他人の成功体験...もっと読む

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コメント

kaiba @longtime1116 https://t.co/SleJLflgcI そこでジェスチャーですよ。 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

matsu_take 以前、カップルの関係を描くテレビCMの日米比較をする議論をゼミでしたことがあります。ちなみに、うちのゼミでは、何をどのように議論をするのかということも司会担当の学生が考えて準備してきます。... https://t.co/YBO8w25S96 2年以上前 replyretweetfavorite